(※写真はイメージです/PIXTA)

就職評価機世代の救済策が叫ばれているが、政府の対応から目覚ましい効果は見えにくい。日本の所得格差はどこまで広がってしまったのか。各国との比較も含め、数字を追っていく。

年金生活者を追い込む、急激な物価上昇

いまなお物価上昇が続いている。7月の消費者物価指数(CPI、総合)は 前年同月比は2.6%の上昇、前月比(季節調整値)は0.4%の上昇となった。生鮮食品を除く総合指数の前年同月比は2.4%の上昇、前月比(季節調整値)は0.5%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の前年同月比は1.2%の上昇、前月比(季節調整値)は0.5%の上昇となった(総務省)。

 

政府・日銀は2%の物価上昇を目標としているが、目指すのは、内需、賃金の上昇に伴う物価上昇であり、外的要因による物価高とは異なるものだ。政府もこの物価高をどうにかすべく手を尽くしている。


だが、現状において効果は目覚ましくない。とくに年金生活者にとっては死活問題となっている。

 

内閣府『令和4年版高齢社会白書』によると、高齢者世帯(65歳以上の者のみ、または65歳以上の者に18歳未満の未婚の者が加わった世帯)の平均所得金額は312万6,000万円。

 

さらに、高齢者世帯を所得別にみていくと、150万~200万円未満が最も多く、また公的年金・恩給を受給している高齢者世帯について、公的年金・恩給が家計収入のすべてとなっている世帯が約半数となっている。

 

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金の平均年金受給額は老齢年金で月額5万6,358円。一方、厚生年金保険(第1号)の平均年金受給額は老齢年金で月額14万6,145円。厚生年金だけに注目すると、男性は17万0,391円、女性は10万9,205円となる。

 

受取額の分布だが、国民年金の受給額が月5万円に満たないのは26.4%と、4人に1人の割合だ。厚生年金が月10万円に満たないのは、男性で10.4%だが、女性は48.5%と過半数近い。

 

前出の白書によると、2019年の生活保護を受給者は減少傾向だったが、65歳以上の生活保護受給者は105万人に達し、増加傾向にあるという。また、65歳以上人口に占める生活保護者の割合は2.93%となっている。

 

生活保護は日本に永住している人なら誰でも受給する権利であり(永住資格を持つ外国人においては準用の扱いとなる)、年金生活者も対象。生活保護を受給する条件のひとつに、世帯全体の収入が厚生労働省の定めた最低生活費以下というものがあり、東京都内に一人暮らしであれば13万円。元会社員の女性の単身高齢者の多くは、対象となる水準だ。

高齢者が犯罪に手を染めてしまう理由

しかし、生活保護などの支援を受けられるならまだましだ。支援の受け方、声のあげ方さ得分からない高齢者もいる。また、世代的な問題だといえるが、高齢者のなかには生活保護にネガティブな印象を持ち、申請に二の足を踏む人も多い。そのような背景から、必要な支援が行き渡らない状況もある。

 

一方、近年報道等で目立つのが高齢者の犯罪、とくに万引きだ。高齢化を特集した法務省『平成30年版犯罪白書』によると、高齢者の刑法犯検挙人数は4.6万人。万引きによる検挙人数は全世代平均で30.8%に対し、65~69歳の高齢者では43.1%、70歳以上では64.6%。特に女性の割合が高く、65~69歳では刑法犯検挙人数の69.5%、70歳以上の82.5%となっている。

 

一方、万引きの検挙人数自体は大きく減少しており、高齢者についても2020年の検挙人は2万1,221人で、微減が続く(警視庁『刑法犯に関する統計資料』)。ただし、下げ幅は他の世代に比べ、非常に緩やかだ。

 

どうして高齢者は万引きに手を染めてしまうのだろう。「社会的な孤立」「認知症」等の理由も考えられるが、やはり生活困窮といった経済的な問題が大きいと思われる。実際、万引きの犯行動機として「お金を払いたくない」が33.0%、「生活困窮」が30.0%と、経済的な問題が目立つ(東京万引き防止官民合同会議『万引き被疑者等に関する実態調査分析報告書』)。

 

それに加え、日本人の長寿も要因となっているとの声もある。つまり、老後が長くなることで預貯金等が減り続け、「これ以上減らせない」という気持ちから、犯行に及んでしまうというものだ。

 

日本人の給与の伸び悩みがたびたび報じられているが、この状況では、生活苦に追い込まれる高齢者はさらに増加すると考えられる。そうなれば、万引きという犯罪に手を染めてしまう高齢者が増えてしまうかもしれない。

 

若い時から苦労を重ね、節約を重ね、老後を迎える段となって「耐えきれず、犯罪」では、あまりにつら過ぎる。日本が抱える深刻な問題として、政府や識者が真剣に向き合うべきタイミングが来ているのではないか。

 

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