(写真はイメージです/PIXTA)

相続人のなかに認知症患者がいるというような場合、手続きはどうすればよいのでしょうか? 具体的な手続きの方法や必要書類、事前準備を相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

相続人のなかに認知症患者がいる場合の相続手続き

父が亡くなったが、高齢の母は認知症で施設に入っているという場合、相続手続きはどのように進めればよいのでしょうか? また、相続人のなかに認知症患者がいる場合にできる対策はあるのでしょうか?
 

認知症患者がいる場合の「遺産分割」

相続が発生し、相続財産について遺産分割協議をしなければならない場合、相続人のなかに認知症等で判断能力が無い人がいる場合、その人は遺産分割協議の当事者となるのでしょうか?

 

遺産分割協議の当事者は、相続人全員であり、相続人全員に判断能力がある必要があります。

 

たとえば、相続人のうちの1名が遠方に住んでいてなかなか連絡がつかないケースでも、その連絡がつかない相続人も遺産分割協議の当事者となります。

 

被相続人の相続人が、配偶者、長男、二男の3名で、配偶者が認知症に罹患しており、遺産分割協議の内容について理解ができない状況の場合は、配偶者は判断能力が無いため、配偶者単独では遺産分割協議に参加できません。

 

なぜなら、配偶者が遺産分割協議の内容が理解できないことをいいことに、長男、二男が自分たちに有利な遺産分割協議を行ってしまう可能性があり、配偶者の権利が不当に侵害されてしまう危険性があるからです。このような場合、配偶者の代わりに遺産分割協議に参加してもらう成年後見人等の選任を家庭裁判所に申立てて、配偶者の権利を守ることになります。

 

ここでは、相続人のなかに認知症で判断能力が乏しい方がいる場合の成年後見人等の申立ての手続きや遺産分割協議の手続きについて、解説いたします。

「法定後見人の申立て」…余裕をもった準備を

上述のとおり、相続人のなかに、認知症等で判断能力が乏しい方がいる場合には、家庭裁判所に対し「成年後見人等」の選任の申立てを行う必要があります。成年後見人等には、判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3種類があります。

 

「後見」:判断能力が欠けているのが通常の状態の人
「保佐」:判断能力が著しく不十分な人
「補助」:判断能力が不十分な人

※以下、後見人・保佐人・補助人を「法定後見人」と総称します。

 

法定後見人申立ての主な必要書類

 

・申立書類
・本人情報シート(本人の福祉関係者に作成してもらうもの)
・診断書関係(主治医に作成してもらうもの)
・本人の戸籍謄本
・本人及び後見人等候補者の住民票又は戸籍附票)
・本人について成年後見等の登記がすでにされていないことの証明書(東京法務局から取り寄せるもの)
・本人の健康状態に関する資料(介護保険被保険者証、療育手帳など)
・本人の財産等に関する資料(遺産分割未了の財産も含みます)

 

法定後見人の申立てには、書類を準備するのに、1~2ヵ月程度かかります。また、申立て後、法定後見人選任の審判が出るまで、2週間~2ヵ月程度かかることもありますので、注意が必要です。

 

親族が法定後見人となることも

法定後見人には、親族が就任することもあります。

 

親族を法定後見人に選任して欲しい場合には、申立書に、誰を選任して欲しいかにつき、選任を希望する人を法定後見人候補者として記載するとよいでしょう。

 

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