(※画像はイメージです/PIXTA)

筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきかを記しています。発達障がいは治療ができない難病ではありません。本記事では、その治療について、実例をもとに解説していきます。

発達障がいの子が「ゲームに夢中になりやすい」ワケ

絵かき歌、かごめかごめ、はないちもんめ、ずいずいずっころばしなど、昔は、遊びの中にリズムとメロディのある歌が宿っていました。自然と音楽に富んだ環境で育っていました。

 

ところが、今は、ゲームに代表されるように、遊びの中の音楽といっても単調なものばかりです。

 

「子どもを取り巻く音環境――子どもの五感を育てる『音育』――」という対談記事の中で、戸井武司氏が、『バーチャルの音の世界にばかりいることで、感受性が弱まるなど人間としての可能性を狭めているということですからね。』(「小児科臨床Vol.61No.10」日本小児医事出版社、2008年より引用)と電気的なバーチャルな音にお子さんが囲まれている環境に警鐘を鳴らしています。

 

また、TVゲームに代表される今の遊びは、反射神経だけを養い、他の遊びに比べ、思考を司(つかさど)る前頭野を使わないものが多いように感じます。

 

発達障がいのお子さんには前頭野を使うのが苦手なお子さんが多くいます。そのため発達障がいのお子さんにとってゲームは他の遊びよりもやりやすく、夢中になりやすい傾向があります。

 

一人でもできるというのも、協調性やコミュニケーションに苦手意識を持っている発達障がいのお子さんにとっては都合がいいものなのでしょう。

 

もちろん悪いことばかりではないと思われますが、そのような遊びだけをしていては得られないものは多くあるのです。おんぶや取っ組み合いのケンカも減り、お互いの匂いやぬくもりも忘れてしまっています。他のお子さんたちと心と体でコミュニケーションして遊ぶことがほとんどない時代になってしまいました。

 

私たちは、今までこのような体験からコミュニケーションのとり方を学んでいました。そして、父親は、畳の上でよく背中にお子さんを乗せて、お馬さんごっこをしたものです。

 

バランスを崩すと落馬するので、落ちないように必死に父親のランニングシャツをつかんでいました。時には、ヒヒーンといって上体を反らし、わざと落とそうとすることもありました。今考えるとそれは、究極の感覚統合訓練だったのではないでしょうか。昔は幼い頃から自然と感覚を磨いていたのです。

 

Margaret M.Bass・Catherine A.Duchowny・MariaM.liabreが2009年に発表した論文によると、乗馬が感覚の感受性を豊かにし、不注意を改善し、座って集中して学習できるような社会的技能を高める手段として音楽とともになんらかの効果があるといいます。私のクリニックで、小学校低学年まではミュージック・ケアの中でお馬さんごっこも取り上げているのはこのためです(※詳細はコチラ)。

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『新訂版 発達障がいに困っている人びと』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

新訂版 発達障がいに困っている人びと

新訂版 発達障がいに困っている人びと

鈴木 直光

幻冬舎メディアコンサルティング

発達障がいは治療できる 診断、対処法、正しい治療を受けるために 書版が出版されてから4年、時代の変化を踏まえて最新の研究データを盛り込み、大幅な加筆修正を加え待望の文庫化。 “「発達障がい」は治療ができない…

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