「一見割安」は「実は割高」物件…そのワケは?
その後、飲食業のほうで急遽まとまった資金が必要になり、金融機関にこの物件を担保に融資の依頼を行ったCさんは、金融機関からの指摘で頭を抱えてしまいます。
登記簿を確認すると、購入した敷地の範囲だと考えていた横の空き地部分が分筆(登記上で一つの土地を複数の土地に分けて登記をすること)されており、Cさんの所有地ではなかったのです。
実はCさんが保有している物件は、以前の所有者が相続を受ける際に相続税として納める現金が不足し、元来の土地を一部分筆して売却した残りの土地に建っていたものだったのです。
ゆくゆくは建替をして利益を得ようとも考えていたのですが、現状の土地では法律上の建蔽率に従って今よりも小さな建物しか建設できません。既存不適格(建築時点では合法だった建築物が、法令の改正などにより現行法では違法となる状態)の物件となるため、金融機関からは融資が得られませんでした。
Cさんが購入したのは一見割安に見えて、実は割高な物件だったのです。元来一つの土地として登記されていた土地が分筆され、建物が既存不適格となっている場合は、重要事項説明書にその旨が必ず記載されています。
しかし、条件の悪い物件を早く売ってしまいたい不動産会社としては、Cさんが初心者であることをいいことにあえてその旨を強調して説明しませんでした。金融機関に融資の依頼をすれば、必ずこの点を指摘されるため、めったに出ない早い者勝ちの物件だと伝え、現金での購入を促していたのです。
この事例が示すように、いわゆる「お買い得」な物件といわれたら要注意です。相場より安い価格、あるいは相場より高い利回りが表示されている場合は、なんらかの原因があると考えるべきです。時間をかけて探しても、対価を得られることがほぼないため、割安な物件を探すことは避けるようにしましょう。
鈴木 子音
株式会社有栖川アセットコンサルティング
代表取締役
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