※画像はイメージです/PIXTA

現在の法律では、同性カップルはパートナーの財産を相続することはできません。現在ではパートナーシップ制度を導入している自治体も増えていますが、国が法律で認める結婚とは異なるため、パートナーは法定相続人とはなれず、パートナーシップ制度を利用していてもパートナーの財産は相続できません。そのため、いざ相続が発生すると、財産をだれに、どのように相続するかで親族とトラブルになることも。親族と争続にならないための対策についてみていきます。

LGBT・同性カップルが相続トラブルを回避するために

LGBTの方や同性カップルが、パートナーに遺産を相続させるための手続きはさまざまです。今ある制度を活用して、将来に不安のない状態を実現しましょう。

 

遺言書を作成する

遺言書とは、亡くなった人の意志表明になる書類です。つまり、遺言書を正しく残しておけば、法定相続人ではない同性のパートナーにも遺産を残せます。

 

遺言書の種類は3種類。自筆証書遺言と秘密証書遺言、および、公正証書遺言です。自筆証書は、財産目録以外の部分をすべて手書きで記載します。自宅か法務局で保管され、自宅で保管する場合は遺言を書いた方が亡くなったときに家庭裁判所において相続人の立ち合いのもと、「検認」という内容の確認作業が必須です。

 

なお、内容を知られたくない場合は秘密証書遺言という選択肢もあります。秘密証書遺言は内容の確認が不要です。2人以上の証人の立会いのもと、公証役場で提出できます。

 

一方、公正証書は公証役場で2人以上の証人の立ち合いのもと、記載するものです。遺言を公証人が記載し、原本は公証役場で保管されます。なお、家庭裁判所における検認は必要ありません。

 

いずれかの方法で遺言書を残せば、自分に法定相続人がいる場合でもパートナーに遺産を相続できます。

 

【注意点】遺言書の内容によっては遺留分を侵害するおそれがあります

 

法定相続人がいるLGBTの方で、同性パートナーにほとんどまたはすべてての遺産を相続させたいと考えている場合は注意が必要です。特定の相続人には「遺留分」という最低限の遺産を受け取る権利があります。

 

たとえば親が存命の状態で亡くなり、「パートナーに遺産すべてを相続させる」といった遺言を残すとしましょう。すると、それは亡くなった方の親の遺留分を侵害していることになります。その場合、亡くなった方の親には「遺留分侵害額請求権」という権利が発生し、遺産の3分の1の金額を請求できるのです。

 

養子縁組をする

同性のパートナーと養子縁組を組めば、法律上の親子となれます。これにより「親族」として2人の間に相続権が生まれるのです。また親族関係にあることで、2人で同じ姓を名乗ることもできるようになります。

 

また税金や年金、社会保険など親族を対象に適用される制度を活用できるというメリットも。ただし、養子縁組をするとパートナーではなく「親子」という関係になります。そのため、お互いの立場に違和感を覚えるかもしれません。

 

さらに養子縁組を組むと、パートナーシップ制度が利用できなくなります。なぜならパートナーシップ制度を適用する条件には、親族関係にないことが含まれているからです。こうしたデメリットも踏まえて、問題なければ養子縁組も相続対策としておすすめです。

 

【注意点】親族に養子縁組関係を説明していないと、トラブルになることも

 

同性パートナーと養子縁組を組む場合は、あらかじめ親族に話して了解を取れるとよいでしょう。なぜなら、親族は「養子縁組無効」の主張ができるからです。

 

当然、相続のときになってはじめて養子縁組のことを親族が知れば驚くでしょう。親族ではなく、養子縁組のパートナーに遺産が相続されるとなればなおさら、反感を買う可能性は高くなります。

 

残されたパートナーが親族から非難されないためにも、あらかじめ親族には話を通しておくと安心です。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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