前回は、貸借対照表と損益計算書が不動産の相続税対策に有効な理由を見てきました。今回は、法人化で作成する「貸借対照表」の重要性を説明します。

貸借対照表が地主の財産を守るために役立つ!?

前回説明したように、地主の人たちの個人事業等の貸借対照表などに対する意識は低いように感じられます。通常の事業所得、不動産所得を計算するのにあまり貸借対照表の必要性を感じないからだと思います。

 

しかし、実は事業経営や不動産貸し付けなどの事業を営み、かつ資産を多く所有する人々にとっては、貸借対照表は財産を守るための情報管理という見地から最も利用価値があるものです(税理士に申告を依頼している納税者は、わざわざ専門家にお金を支払って申告書を作成するのですから、貸借対照表の正しい作成方法をアドバイスすることが税理士としての義務であるとの思いを個人的にはもっております)。

法人の財務諸表を利用した「合算貸借対照表」とは?

具体的には、法人の財務諸表を利用して株価の評価を行い、個人の事業および不動産事業などで作成された貸借対照表を利用して、これにそれ以外の財産として自宅や遊休資産などの一覧とその評価額を加えることで、合算貸借対照表(正式名称ではありませんが)が作成されます。

 

合算貸借対照表は、法人の部分は株価評価額を有価証券または株式として事業等それ以外の部分で集計するので、直接合算をするわけではありません。また、個人事業等の正しい貸借対照表の合算時にはそのままでは相続税評価額として相続税対策に利用できませんから、別途計算した貸借対照表上に計上されている金額と、相続税評価額との差額を個人の貸借対照表の中の元入金の科目の下に評価差額としてプラス表示もしくはマイナス表示で行います。

 

プラス表示となった場合には、合算貸借対照表に表示されている資産と負債の差額より相続税評価計算による正味財産の価額が大きいことを示しており、その反対にマイナス表示の場合には資産と負債の差額より少ないことを示しています。

 

その結果、資産と負債の差額にプラスかマイナスの表示額を加減すれば、相続税評価額がいつも見られるということになります。これがいつも手元にあれば効果的な相続税対策を行うことができ、かつ専門家との相談もスムーズに進むことになります。

 

筆者が税の専門家の一人として思うのは、しっかりと目的を持って対策を行えば専門家に支払っている料金以上の効果をあげられるものが、案外利用されていないということです。税理士の側にも積極的に効果のある対策をアドバイスしようという、サービスの提供意識に欠ける者がいます。本連載を利用して、ぜひ専門家に「このような対策もあるのではないか」と働きかけてみてください。

本連載は、2014年11月27日刊行の書籍『地主の相続財産は法人化で残す』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地主の相続財産は法人化で残す

地主の相続財産は法人化で残す

小澤 豊,川本 泰正

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税をできるだけ節税したい、遺産分割で家族がもめてほしくない──。地主にとって相続は、頭の痛い問題です。 多くの地主の相続財産は、現金ではなく土地が大半のため、いざ相続になったときに預貯金だけでは相続税を支払…

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