口の中の菌を洗い流す「唾液」の自浄作用とは?
人間は昔から、夕食に時間をかけてきました。これは免疫力を高め病気から身を守るために自然と身についた習慣の一つといえます。
ゆっくり食べるということは、よく嚙んで食べるということであり、嚙めば嚙むほど唾液の分泌が促されます。この唾液には、消化作用のほか健康に良いさまざまな作用が知られています。
例えば、唾液には口の中に棲む菌を洗い流す自浄作用があります。口内には300種類を超える常在菌が、数千億個以上も棲んでおり、衛生状態が悪いと繁殖して、むし歯や歯周病の原因になります。唾液は、こうした菌を定期的に洗い流すことで、口内への定着や繁殖を防ぐ働きがあります。
また、歯ぐきや舌をはじめ、口の中は表面が粘膜で覆われています。ここが乾いてしまうと、傷つきやすくなり、病原菌などの侵入もしやすくなります。唾液には、口の中を常にうるおしておくことで、こうした刺激から守る粘膜保護作用もあるのです。
心身に好ましい影響を与える「ゆっくり食べる」行為
免疫に関係の深いところでは、唾液に含まれる酵素による抗酸化作用が挙げられます。近年の研究で、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼなどの酵素に抗酸化作用があり、体内で発生する活性酸素を消去できることがわかってきました。よって、ゆっくりとよく嚙んで食べ、唾液の分泌を促進させることは、免疫力アップにつながるといえるのです。
一方、ゆっくり食べることは、精神的な面でも免疫力に好ましい影響を与えます。食事とは本来、「見る、匂いを嗅ぐ、触る、嚙む、喉ごしを感じる」といった五感で楽しむ行為です。ゆっくり食べて五感を存分に働かせることで、脳に良い刺激を与えます。
そうすると脳から、α波というリラックスを司る脳波が出やすくなります。これが免疫の働きをスムーズにさせると考えられています。例えば、普段食べている白米を玄米に代えてみると、歯ごたえがあるため自然と嚙む回数が増え、味わって食べることになります。
また、玄米の米ぬかに含まれるアラビキノキシランがNK細胞を活性化するといわれており、免疫力アップが期待できます。