(※画像はイメージです/PIXTA)

8月に入り、米ドル/円は上下に大きく動いています。このように不安定な為替相場となるなか、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、今後の米ドル/円の展開を予想するうえで、ある「世界景気後退のシグナル」に注目しているといいます。米ドル/円の予想レンジとともに、詳しくみていきましょう。

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      「米金利上昇=米ドル高」は続くのか

      さて、米ドル急落・急反発を経て、135円まで戻してきた米ドル/円ですが、ここからさらに上昇する可能性があります。

       

      5日の米雇用統計発表を受けて、米景気への悲観論は大きく後退し、次回の9月FOMCでは利上げ幅が3回連続で0.75%になるとの見方が再燃しました。

       

      今週は、CPI(消費者物価)、PPI(生産種物価)など注目のインフレ指標発表が予定されているため、それらをにらみながら米金利上昇思惑のなかで米ドル高値を模索することになるでしょう。

       

      ただ個人的には、このような「米金利上昇=米ドル高」のトライはいずれ限界に直面するのではないかと感じています。その根拠として注目したいのは、原油価格の急落です。

       

      原油価格は、WTIでみると6月前半に120米ドル台で当面のピークを打ち、先週は90米ドル割れまで下落しました[図表4参照]。

       

      WTIが100米ドルの大台を突破したのは今年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まるところでの出来事です。そのウクライナ侵攻が依然として続いているなか、WTIは最近にかけてウクライナ侵攻以前の水準まで下落してきました。

       

      出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
      [図表4]WTIの推移(2021年1月~) 出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

       

      ところで、WTIのピークアウトのタイミングは、実は米金利のピークアウトともかなり近く、前者のピークは6月8日、後者は6月14日となっています[図表5参照]。その後WTI、米金利ともに低下傾向が続いていることからすると、景気減速の可能性がみえてきます。

       

      出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
      [図表5]米2年債及び10年債の利回り推移(2022年1月~) 出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

       

      そもそも、よく誤解されやすいところですが、原油相場のトレンドは産油国の動向などといった「供給要因」より、世界景気などの「需要要因」との相関関係が基本です。つまり、今回の原油価格の急落は、世界的な景気後退に伴う需要縮小が影響している可能性があるわけです。

       

      ちなみに、WTIの90日MA(移動平均線)かい離率は、足元でマイナス20%近くまで拡大してきました[図表6参照]。これでみると、先週90米ドル割れとなったWTIの下落は、短期的には「下がり過ぎ」を拡大する動きといえます。

       

      出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
      [図表6]WTIの90日MAかい離率(2010年~) 出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

       

      ウクライナ情勢は、基本的には原油などの資源価格にとって上昇圧力となる、「供給要因」と位置付けられます。

       

      このウクライナ情勢の緊迫した状況が変わらないなかで、資源価格が「上がり過ぎ」の反動で下落するならまだしも、最近起こっているのは「下がり過ぎ」の拡大です。ということは、世界景気後退に伴う原油など資源の需要縮小を疑う必要があるでしょう。

       

      つまるところ、このような原油価格急落が「世界景気後退のシグナル」ということであれば、これはインフレ率を低下させ、インフレ対策の利上げを下方修正させる要因となります。したがって、「米金利上昇=米ドル高」の持続性にも限界があると考えています。

       

      以上から、今週の米ドル/円は、米ドル高を模索するものの、それには自ずと限度があるとの想定で、133.5~137.5円中心での展開を予想しています。

       

       

      吉田 恒

      マネックス証券

      チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

       

      ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

       

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