(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 20,174.04 pt (+2.06%)
中国本土株指数6,879.69 pt (+2.12%)
レッドチップ指数 3,577.91 pt (+0.66%)
売買代金889億4百万HK$(前日955億2万HK$)

米中の緊張状態は軍事衝突に発展しないとの見方が優勢

8月4日の香港市場は、台湾をめぐる米中間の緊張状態のエスカレーションが和らぐ流れとなった。

 

中国当局は、ペロシ下院議長の訪台に対する警告を発し、中国人民解放軍が海域・空域で実弾射撃を含む軍事演習を行うことを伝えたものの、軍事衝突などの極端な状況悪化には発展しないとの見方が広がった。

 

ハンセン指数は朝方に心理的節目だった20,000ポイントを回復し、同指数は前日比2.06%高と2日続伸した。ただ売買代金は高いとはいえず、2日連続で1,000億香港ドル割れだった。

 

昨日に続いてネット株中心に買い戻しが先行し、ハンセンテック指数は3.18%高で引けた。Eコマース大手のアリババ(9988)は5.1%高、京東集団(9618)は5.4%高、検索大手の百度(9888)は4.2%高となった。

 

電子部品関連銘柄なども買われ、電子機器製造の比亜迪電子(0285)は9.5%高、光学部品メーヵーの舜宇光学科技(2382)は6.2%高と指数を押し上げた。比亜迪電子については同社が出資する会社が電子タバコの生産許可を取得との報道が材料となった。

 

中国市場は上海総合指数が前日比0.80%高の3,189.04と3日ぶりの反発、CSI300指数は0.85%高の4,101.54で引けた。地政学的リスクへの懸念が重しとなり、両指数とも、値動きは芳しくなかったが、自立反発狙いの買いから反発に転じた。

 

前日には約2ヵ月ぶりの安値をつけ、4月から6月の上昇のほぼ半値戻しを達成したこともあり、短期的な下値を確認した可能性も示唆される。

中国債券市場の資金流出が止まらず、米中両市場に明暗

中国債券市場では7月も市場から資金の流出が続いた。国際金融協会(IIF)によると、7月の中国債券市場から約30億ドルが流出した。今年2月から、6ヵ月連続の資金流出となる。

 

また、同期間の中国株式市場からは7月に約35億ドルの資金が流出しており、4ヵ月ぶりの売り越しとなった。

 

海外投資家は今年2月から中国債券を売り越している。背景には、今年に入って米国の金利引き上げが急ピッチに実施され、10年米国債利回りは5月上旬に節目の3.0%を超え、約10年ぶりに10年中国債利回りを上回ったことが挙げられる。

 

また、人民銀行(PBOC)はゼロコロナ政策で落ち込む経済を支援するため、金融緩和を促す一方、米国は高騰するインフレを制御するために利上げに動いており、両中銀の政策の違いも、中国を含めた新興市場からの資金が米国に向かう動きを後押ししている。

 

株式相場も、7月に入って、中国経済への懸念と米国経済の相対的な安定感から米中両市場の指数の動きは明暗が分かれている。

 

米国の株価指数は6月のFOMCを終え株式指数は底打ちし、S&P500は今年5月以来、約3ヵ月ぶりの高値を更新してきている。

 

米国企業決算も良好で足元の景気の足取りは確かであるため、相場は落ち着きを取り戻している。ボラティリティ指数(VIX)も前日比8,27%低下している。

 

一方、対極的になっているのが中国・香港市場で、株価指数はいずれも7月の高値から10%強下落した。

 

ただ、マーケットの懸念はやや行き過ぎた感もあり、過度にリスクをおり込み、反動から戻りの可能性も十分にあるのではないか。香港・中国市場の反転の兆しに期待したい。

 

 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

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