「精神科に来る人」への本音
■実際、「もっと早く来れば…」という患者さんが多い
「うつは心の風邪。だから気軽に精神科に行きましょう」という啓発キャンペーンによって、「何も問題がない人に診断を出して、患者を増やしている」という批判があります。
しかし、少なくとも私の感覚としては、そんなことはありません。何も問題がないのに、精神科に来る人はいません。みなさん、いろいろな問題を抱えている人ばかりです。
逆に「もっと早く来ればよかったのに」という患者さんばかりです。
たとえば、退職してから来院する患者さんがいます。退職前に来て、傷病手当金を受けながら休職してしっかり休めば、復職もありえます。それが、会社を辞めてしまったあとだと、そうしたアドバイスもできません。
仕事がうまくいかない焦りから、患者さんが会社を辞めてしまうのも、わからないわけではありません。会社側にも、「籍を置いておかれると、復職時にどう扱ったらいいかわからない」「他の人を新しく入れたい」「パワハラがあったことをもみ消したい」などの理由で、「辞めてほしい」と迫る企業は存在します。
患者さんを診ていても、「それはあなた本人の問題じゃなくて、会社の問題じゃないの?」「『仕事ができない自分が悪い』とあなたは言うけど、第三者の立場から客観的に見ると、それは明らかに会社のパワハラだよ」ということも多いのです。
益田 裕介
早稲田メンタルクリニック 院長
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