(※写真はイメージです/PIXTA)

最近眠れない。仕事がうまくいかない。自分は発達障害かもしれない…。さまざまな悩みから、精神科を受診すべきか否かを悩む人は多いでしょう。「辛いのは本当だが、病名がつくほどではないと思う。この程度で受診してよいものか」と迷う人もいるかもしれません。精神科はいつ受診するものなのでしょうか? 早稲田メンタルクリニック院長・益田裕介氏の著書『精神科医の本音』(SBクリエイティブ)より、「精神科を受診する基準はどこにあるか?」を見ていきます。

精神科を受診する基準・目安

■何よりもまず「自分が“受診したい”と思ったら」

仕事がつらくて休みたいと思っている方で、初めて精神科を受診しようと考えている方は、受診するタイミングや、休職する基準について、よくわからないと思います。

 

前提として、いちばん大事なのは自分の気持ちです。患者さんがつらい思いを抱えているのに、医師が「それくらいで来ないでよ」と思ったり、「もっと頑張りなさい」と言ったりすることはまずありません。患者さんの気持ちを尊重します。だから、受診したいと思ったら、受診していただいて大丈夫です。

 

たとえは悪いのですが、精神科医は被告人の弁護士のようなもので、「この人にもこんな言い分があるんだ」と全面的に患者さんの味方をします。それが私たちの仕事でもあるので、「それくらいで休むの?」と否定するようなことはしません。

 

■自分自身が「まだ受診するレベルではない」と思っても…

本人は受診を考えていなくても、家族、友人、上司といった周りの人から「もう休んだ方がよいんじゃない?」「精神科に行ってみたら?」と心配されてアドバイスをもらっていることもよくあります。患者さんの中には「そう言われても、うーん」と…無視して、なかなか受診しなかったという方も多いのですが、そうした第三者からの意見も参考にし、受診してもらえればと思います。

 

他の目安としては、次のようなものがあります。

 

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●食事は摂れているか?

食事が摂れなくて1日1食になっているなど、どんどん瘦せていっている場合は、休んだ方がよいサインです。精神科を受診してください。

 

●眠れているか?

眠れなくなったら、受診した方がよいでしょう。休職をしないにしても、睡眠薬を使って眠れるようになり、どうにか出勤できるということもあります。眠れないとイライラしますし、思考が変な方向に向かいます。

 

●動悸(どうき)がしたり、涙が出たりしていないか?

出勤前に動悸がしたり、会社に向かう電車の中で涙がポロポロこぼれるようになったら、受診した方がよいでしょう。ここまで追い込まれていても、「つらいわけじゃないのに、なぜか涙が出るんです」と言う患者さんもいますが、それが「つらい」ということなのです。

 

●残業時間

残業時間の多さも、目安になります。月に100時間を超えていたら、過労死ラインです。患者さんの中には「タイムカードを切るので、それほど残業はしていないのです」と言う方もいますが、実際にどれくらい働いているかが重要です。残業時間が過度に延びている場合は、休職を勧めます。

 

●死にたい気持ちがあるか

死にたい気持ちが出ていたら、当たり前ですが、通院した方がよいでしょう。仕事も休んだ方がよいです。「死にたいです、でも仕事を頑張ります」というのは変ですし、「仕事を頑張れないので、もう死にます」というのもおかしな話です。

 

疾患によって視野が狭くなってしまっている可能性が高いので、やはり休んで受診することが大事です。「自殺は個人の自由」などと心ないことを言う人もいますが、それは病気というモノをよくわかっていない人です。

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精神科を受診するハードルは下がったと言われますが、そうは言ってもまだまだ抵抗感を持つ人は多くいます。そうした人には、「困りごとを専門家に相談に行く」というようなノリで、気軽に考えればよいとお伝えしたいです。

 

通院しても、診察料は初診で2500円、再診で1500円ほどです(保険で3割負担の方の場合)。

 

「病気や治療の知識を持った専門家に、1500円で相談できて、自分の頭が整理できる」と思えば、非常に“お得”ではないですか?

 

ですから、「行くべきか? 行かざるべきか?」などと悩まず、少しでも気になったら病院で診てもらうのがよいと思います。

次ページ「精神科に来る人」への本音

※本連載は、益田裕介氏の著書『精神科医の本音』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、再編集したものです。

精神科医の本音

精神科医の本音

益田 裕介

SBクリエイティブ

通院する前に患者が知っておくべき現実をつまびらかに明かす! 現役精神科医が語る「精神科」の裏側とは? 精神疾患を持つ患者数は400万人を超え、急増の一途をたどっている。精神科・心療内科に通うことは、もはや誰にと…

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