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信託についての仕組みやメリットとデメリットをわかりやすく解説します。老後に2,000万円が必要といわれるようになり、投資や信託への関心が高まりつつあります。本記事を参考にして、信託についての理解を深めましょう。

「信託」という言葉は聞いたことがあるけれど、その具体的な内容やどのように始めればいいのかについて、わからない方もいるのではないでしょうか。

 

そこで本記事では、近年注目を浴びている信託についてその制度や仕組みを解説します。また信託を利用することで、どのようなメリットやデメリットがあるのかもご紹介しますので、本記事を参考に信託についての知識を深めましょう。

目次
1. 信託とはどんな制度?読み方と共に簡単に解説
1.1. 信託(しんたく)とは
1.2. 信託が利用される主な4つの目的
1.3. 信託できる財産の例|制限はなく幅広く信託できる
1.4. 信託に関する5つの基礎用語
2. 信託はどのような仕組みで財産を管理するのか?
3. 信託をして得られる3つのメリット
メリット①:管理方法や運用目的を自ら決めることができる
メリット②:預ける相手が専門家なので安心して預けられる
メリット③:信託する財産の安全性が確保されている
4. 信託利用時に生じうる2つのデメリット
デメリット①:登記や手数料などの費用がかかる
デメリット②:関係者間のトラブルの原因になることも
5. 信託は主に3種類に分類される
5.1. 個人信託:個人が委託者として行う信託
5.2. 法人信託:法人が委託者となる信託
5.3. 公益・福祉信託:社会福祉に役立てる目的で行う信託
6. 信託しようと思ったら?信託を依頼できる場所は主に3箇所
6.1. 信託関連が主な業務:信託会社
6.2. 銀行業務などと併営業務:信託銀行
6.3. 信託会社などからの委託業:信託契約代理店
7. 信託に関するよくあるQ&A
Q1. 投資信託を故人から相続することは可能か?
Q2. 信託契約とは何か?
Q3. 家族信託とはどのようなものか?
8. まとめ

1. 信託とはどんな制度?読み方と共に簡単に解説

(※画像はイメージです/PIXTA)
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まずは「信託」の言葉の意味を解説します。その他にも信託が利用される理由、その目的もご紹介します。

 

1.1. 信託(しんたく)とは

信託とは、自分の財産を信頼できる相手に託す行為のことをいいます。

 

これに対し、何かの法律的な手続きを信頼できる相手に託す場合は、信託とはいわず「委任」と呼びます。

 

また信託とは、ただ財産を託すだけではありません。依頼者それぞれの目的や希望に沿った資産運用を行い、管理をしてもらう制度が「信託」です。

 

1.2. 信託が利用される主な4つの目的

信託の目的は大きく4つに分かれます。

 

1つ目の目的が貯める、増やすということ。

 

これは信託を利用するうえで最も多い目的でしょう。いわゆる資産運用と呼ばれる行為がこれに当たります。

 

2つ目の目的が守るということ。

 

資産管理とも呼ばれ、自分の財産をしっかりと管理して破綻しないようにしてもらうことを目的としています。結婚して働いている男性が、専業主婦の奥様にお金の管理を任せるのに似ています。

 

3つ目の目的が譲るということ。

 

自分の大切な財産を子供や配偶者に譲りたい場合に活用するのがこのパターン。いわゆる資産継承と呼ばれるものです。いかに相続税や贈与税を安くするかということを考えている人にはおすすめの方法です。

 

4つ目は、社会貢献です。自分の財産が増えたことで社会の役に立ちたいと考えている人向けの方法です。たとえば「自然を保護したい」「動物を保護したい」など、色々な目的に利用されます。

 

1.3. 信託できる財産の例|制限はなく幅広く信託できる

信託できる財産には基本的に制限はなく、どんなものでも信託することができます。

 

金銭や不動産、株や債権などが代表的な財産として挙げられます。

 

たとえば今ある財産をより安全に増やしたいとします。

 

投資や不動産運用で財産を増やそうと思った場合に、これらの経験がないとどうやって財産を増やせばいいのかわからないでしょう。

 

そこで信託を利用するわけですが、代表的なものが投資信託です。

 

自分の財産をファンドマネージャーと呼ばれるプロに委託することで財産を増やしてもらうというのが投資信託の基本です。

 

投資信託の商品によっては、100円から始められるものもあるので、興味がある方は投資信託を始めてみるのもいいでしょう。

 

1.4. 信託に関する5つの基礎用語

信託を行ううえで覚えておきたい5つの専門用語が以下になります。

 

  • 信託受益権(しんたくじゅえきけん)
  • 信託財産(しんたくざいさん)
  • 信託目的(しんたくもくてき)
  • 自益信託(じえきしんたく)
  • 他益信託(たえきしんたく)

 

信託受益権とは読んで字のごとく、信託によって発生した利益を受け取る権利のことです。当たり前のことですが、自分の財産を他人に託して資産運用をしてもらうわけですから、預けた本人がこれによって発生した利益を受け取る権利を持ちます。この権利を預けた本人以外にも設定することができます。

 

前述した目的の「譲る」がこれに当たります。自分の財産を資産運用してもらって子供などに利益を受け取ってもらう場合、利益を受け取る人物を受益者と呼び、利益を受け取る権利のことを信託受益権と呼びます。

 

信託財産とは資産運用したり資産管理をしたりする財産そのもののことです。前述したように、この信託財産には原則制限はありません。

 

信託目的とは「誰」に「どのように」資産を運用管理してもらうかを設定することです。目的・目標を達成させるためにも、最初にしっかり考えるべき重要な部分でしょう。

 

自益信託は財産を預けた本人が利益を受け取る場合の信託のことを呼び、信託受益権が財産を預けた本人以外の人の場合には、他益信託と呼びます。

 

これら5つの用語は、信託の基本用語なのでこれから信託を始めたい方はしっかりと覚えておきましょう。

2. 信託はどのような仕組みで財産を管理するのか?

信託の基本的なことがわかったところで、信託の仕組みを解説します。

 

まず基本的に信託には財産を預ける「委託者」と、その財産を管理する「受託者」、そして利益を受け取る「受益者」の三者がいます。

 

[図表1]信託の仕組み

 

前述したようにこの受益者は委託者本人である場合と、家族などの他人である場合の2ケースがありますが、どちらでも信託の基本的な仕組みは変わりません。

 

初めに委託者は、銀行や証券会社などの財産を預ける場所をインターネットやテレビ、パンフレットなどを通して自分なりに調べて信頼できる委託者を選択します。

 

信頼できる受託者に自分の財産を預けたら、ここからは受託者の仕事です。このとき、委託者と受託者の間で交わす契約のことを信託契約と呼びます。

 

信託の大きな特徴としては、契約によって財産を信託すると、その財産の所有権が委託者から受託者に移る点です。

 

受託者は厳しい法律の元、預かった財産を運用管理していくこととなります。

 

こうして発生した利益は、委託者が設定した受益者の元へと還元されます。大抵の場合はこのときに受託者に手数料を払うことになります。

3. 信託をして得られる3つのメリット

(※画像はイメージです/PIXTA)
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ここからは信託をして得られるメリットを3つご紹介します。

 

信託をして得られるメリットとしては、預ける財産の管理方法や運用の目的を委託者が決められる点、受託者は専門家であり素人ではないため安心して預けられる点、預けた財産は安全に確保されている点の3つが挙げられます。

 

これらの詳細については後述しますが、他にも預けられる財産の種類が限定されていない点や税金対策になるなどのメリットもあります。

 

メリット①:管理方法や運用目的を自ら決めることができる

まず1つ目のメリットが、預けた財産の管理方法や運用目的を自分で決めることができるという点です。

 

財産を増やす目的は、自分の老後のために増やしたい場合や、家族や子孫のために少しでも多くの財産を残しておきたいという方が多いでしょう。

 

このように、誰のために、どういった目的で、どんな形で財産を管理したり運用したりするかを委託者が決定できます。

 

メリット②:預ける相手が専門家なので安心して預けられる

2つ目のメリットは、預ける相手がその道のプロであり専門家であるということです。

 

プロの専門家は知識も経験も豊かです。もちろん独学で勉強をし自分で資産を管理したり、増やしたりすることも可能ですが、それには時間も労力もかかります。プロに財産を預けておけば、より効率的かつ安心して任せることができるでしょう。

 

さらに、預けた財産は法律によって守られているので安心です。これについてはメリットの3つ目で詳しく解説します。

 

メリット③:信託する財産の安全性が確保されている

メリットの3つ目は、信託した財産の安全性が確保されているという点です。

 

財産を預ける相手はプロの専門家だとしても、大事な財産を預けるとなれば様々な不安があるでしょう。

 

しかしひとつの安心材料としてあげられるのは、財産を預けられた受託者には「信託法」や「信託業法」といった法律が厳しく課せられている点です。簡単にいうと、人の財産をぞんざいに扱うことは許されないという事です。

 

このように、信託した財産の安全性が確保されている状態のことを「財産管理機能」と呼びます。

 

また、万が一受託者や委託者が何らかの原因で破産したとしても、信託された財産はあくまでも受益者のための財産なので影響を受けません。これを「倒産隔離機能」と呼びます。

4. 信託利用時に生じうる2つのデメリット

(※画像はイメージです/PIXTA)
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ここまでは信託を利用するメリットをご紹介してきましたが、当然ながら信託を利用することでデメリットも生じます。

 

大きなデメリットとしては、手数料がかかるという点と、委託者と受託者間や、受託者と受益者間でのトラブルが起こる可能性があるという2点です。

 

これらについて詳しく見ていきましょう。

 

デメリット①:登記や手数料などの費用がかかる

1つ目のデメリットは手数料などの費用がかかるという点です。

 

信託はあくまでもビジネスであってボランティアではありません。当然ながら発生した利益の一部を手数料として受託者に支払う必要があります。

 

ここで注意したいのが隠れコストと呼ばれる存在です。一般的に信託にかかる手数料は「信託報酬」と呼ばれるものであることがほとんどです。

 

しかし実際には売買委託手数料や有価証券取引税といったコストもかかります。さらに信託する相手によっては保管費用等も発生する場合もあるでしょう。こうした目に見えないコストを隠れコストと呼びます。

 

また、信託は一般的に当事者間による契約であり、公式の証書などがなくても問題はありません。しかし正式な信託口座を金融機関で開設するためには、信託契約書を公正証書にしなければなりません。

 

公正証書にするためにはそれなりの金額がかかるので注意しましょう。手数料は一般的に財産の評価額によって増減しますが、おおよそ1万円~3万円程度であることがほとんどです。

 

デメリット②:関係者間のトラブルの原因になることも

信託のデメリットの2つ目は、関係者間のトラブルの原因になる危険性がある点です。

 

信託とはあくまでも金融商品なので損失が出ることもあります。損失が出続けると委託者は受託者に不信感を募らせることになるため、どうしてもトラブルに発展しやすくなります。

 

更に信託した財産の権限を持つのは受託者であることが多いです。どんなに厳正で公正に受託者が管理していたとしても、受益者と利益を得られない相続人がいた場合には不公平感が出てくるのは必然です。

 

こうなると、受益者とそうでない相続人、委託者との家族間でのトラブルが起こる原因になる危険性もあります。

 

相続人が複数人いて、受益者が1名のみの場合には、家族間でしっかりと話し合いをしておく必要があるでしょう。

5. 信託は主に3種類に分類される

(※画像はイメージです/PIXTA)
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信託の基本情報がわかったところで、ここからはもう少し信託の中身を見ていきましょう。

 

信託は基本的に「個人信託」と「法人信託」と「公益・福祉信託」の3つに分けることができます。

 

これらは信託する目的や委託者によって名称が異なります。それでは順番に解説します。

 

5.1. 個人信託:個人が委託者として行う信託

信託の種類の1つ目は個人信託です。

 

基本的に皆さんが行う信託で多いのは、この個人信託でしょう。

 

委託者が個人であれば個人信託となります。個人信託で代表されるのは投資信託や不動産信託ですが、最近では家族信託というものも増えています。

 

たとえば委託者が高齢で自分の財産を他の家族に相続させたい場合、相続税などを抑えたいときなどに利用する方が増えています。

 

他にも高齢者や病気の方のための財産管理として信託を利用する方もいます。この場合には福祉型信託と呼びます。

 

5.2. 法人信託:法人が委託者となる信託

2つ目が法人信託です。

 

法人信託とは、その名の通り法人が委託者となる信託です。

 

法人信託は、従業員のための年金や企業の資金調達、あるいは企業の買収防衛等のために幅広く活用されています。

 

たとえば企業が「敵対的買収」を仕掛けられたとしましょう。そのせいで企業の価値が下がった場合に、敵対的買収をする者以外の株主に「新株予約権」というものを付与することで株主総会での議決権の比率を下げることが可能です。この防衛策を「信託型ライツプラン」と呼び、法人信託の代表例に挙げられます。

 

5.3. 公益・福祉信託:社会福祉に役立てる目的で行う信託

投資の3つ目が公益・福祉信託です。自分や家族のためではなく、信託によって発生した利益を社会福祉のために活用する投資方法のことです。

 

たとえば自分の財産が技術開発の費用に充てられたり、芸術や学術のための費用に充てられたりします。このような投資を公益投資と呼び、公益法人と同等の機能を持ちます。

 

他にも、障害を持っている方への支援のための信託もあります。信託によって発生した利益を特定の障害を持った方への支援へ充てる信託で、「特定贈与信託」と呼ばれます。

6. 信託しようと思ったら?信託を依頼できる場所は主に3箇所

(※画像はイメージです/PIXTA)
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ここまで信託について解説してきましたが、それでは実際にどんな場所に信託すればいいのでしょうか。

 

基本的に信託を依頼できる場所は3箇所です。信託会社か信託銀行、そして信託契約代理店です。

 

これら3箇所について詳しく見ていきましょう。

 

6.1. 信託関連が主な業務:信託会社

信託を依頼できる場所の1箇所目は、信託会社です。

 

信託会社とは、信託業務を行う株式会社のことをいいます。信託会社が自らの裁量で預けられた財産を資産運用し管理する「運用型信託会社」と、委託者が目的や手法を指示してそれに従って財産を管理する「管理型信託会社」の2種類があるので、自分に合ったタイプの信託会社を選びましょう。

 

信託会社は誰でも設立できるわけではなく、信託業法によって運用型信託会社の場合は免許を習得する必要があります。管理型信託会社の場合も登録をしないと信託業務を行うことができません。

 

6.2. 銀行業務などと併営業務:信託銀行

信託を依頼できる場所の2つ目は信託銀行です。

 

通常の銀行業務に加えて、信託業務まで行うことが可能な銀行を信託銀行と呼びます。

 

または「信託兼営金融機関」と呼ばれることもあります。

 

6.3. 信託会社などからの委託業:信託契約代理店

信託を依頼できる場所の3つ目は、信託契約代理店です。

 

前述した信託会社や信託銀行、信託兼営金融機関から委託されて、信託契約の締結を代理で行ったり紹介したりする業務を行っています。

 

イメージとしては、保険やスマホ契約の代理店と同じです。

 

信託契約代理店は、信託銀行が行う「併営業務」の契約を代理に行う場所もあります。「併営業務」とは、通常の銀行業務の他に業務を行うことを指します。この場合銀行法や兼営法といった法律の管理下におかれるため、委託者は安心して財産を預けることができます。

7. 信託に関するよくあるQ&A

(※画像はイメージです/PIXTA)
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それでは最後に信託に関してよくある質問とその回答をご紹介します。

 

よくある質問は大きく分けて3つあります。

 

信託を故人から相続できるのか、そもそも信託契約とは何なのか、そして本記事でも登場した家族信託とは何なのか、というもの。

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

Q1. 投資信託を故人から相続することは可能か?

相続することは可能です。ただし、全額を相続できるかどうかに関しては、親族での協議や遺言書の有無によって大きく変わってきます。

 

Q2. 信託契約とは何か?

委託者と受託者の間で締結される財産に関する契約のことです。この契約には、どのような目的で財産を管理するのか、どんな形で運用していくのかが記載されています。

 

この契約によって預けられた財産は信託財産として管理されるため、受託者が破産したとしても、信託財産は何の影響も受けません。

 

その代わりに、財産を管理するための手数料や利益が発生した場合に手数料を支払うことなども明記されています。

 

信託をするための契約が信託契約ということです。

 

Q3. 家族信託とはどのようなものか?

家族信託とは加齢や病気などの原因によって自身で財産が管理できなくなったときのために、自分の財産管理の権利を家族に与えておくことをいいます。このような信託は民事信託と呼び、プロの信託業者以外の者が受託者として設定される特殊なケースといえます。

 

ところが、この家族に委託する方法だと家族間でトラブルとなるケースもあります。そこで家族信託を弁護士に依頼するケースが増えています。

 

弁護士に依頼する大きなメリットとしては、家族ごとに合った契約書をすんなりと作成することが可能になることでしょう。契約の内容やその正当性を第三者の目から見てしっかりと公平に作成してもらえます。

8. まとめ

(※画像はイメージです/PIXTA)
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本記事では、信託について解説しました。

 

信託は難しいイメージがありますが、信託先がプロの専門家であれば安心して任せられる資産運用方法だということがわかったと思います。

 

一方のデメリットとしては手数料がかかることや当事者間でトラブルになる危険性があることが挙げられます。しかし当事者間トラブルのデメリットに関しては弁護士に依頼することで、ある程度は回避できます。

 

この記事を参考にして、信託の知識を深めましょう。

 

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