●大方の予想通り0.75%の利上げを決定、声明では引き続きインフレ抑制の積極姿勢が示された。
●パウエル議長は今後の利上げについてデータ次第としながらも利上げペースを緩める可能性を示唆。
●株価はパウエル発言を好感、ただ実施の利上げペースは次回会合までの雇用や物価動向次第に。
大方の予想通り0.75%の利上げを決定、声明では引き続きインフレ抑制の積極姿勢が示された
米連邦準備制度理事会(FRB)は、7月26日、27日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標について、大方の予想通り、1.50%~1.75%から2.25%~2.50%へ引き上げることを決定しました。市場の焦点は、すでに9月以降の利上げペースに移っていましたので、以下、FOMC声明とパウエル議長の記者会見から、その手掛かりを探ります。
まず、FOMC声明では、景況判断について、「最近の消費と生産の指標は鈍化している」との認識が新たに示されました。ただ、雇用は堅調で失業率は低く、インフレは高止まりしているとの見解は、従来通りでした。また、「インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットする」との文言は維持されたため、声明からは、引き続き積極的にインフレ抑制に取り組むという当局の意向がうかがえます。
パウエル議長は今後の利上げについてデータ次第としながらも利上げペースを緩める可能性を示唆
次に、パウエル議長の記者会見での発言をみていきます。パウエル議長は、今後の金融政策について、「継続的な利上げが適切」との考えを示し、利上げのペースについては「今後の指標や経済見通し次第」と述べました。また、次回の会合で、「異例の引き上げが適切となる可能性はある」としつつも、その判断は「今から次回の会合までのデータ次第」と説明しました。
パウエル議長はまた、「金融政策のスタンスがさらに引き締まるにつれ、これまでの政策調整が経済やインフレにどのように影響しているかを評価しながら、利上げペースを緩めることが適切となりそうだ」と発言しました。米国経済については、「景気後退下にあるとは考えていない」との認識を示しましたが、「金融引き締めに伴うある程度の景気減速は避けられない」と述べました。
株価はパウエル発言を好感、ただ実施の利上げペースは次回会合までの雇用や物価動向次第に
パウエル議長が、利上げ判断はデータ次第としながらも、利上げペースを緩める可能性に言及したことから、7月27日の米国市場は、株価上昇、長期金利低下、ドル円はドル安・円高で反応しました(図表1)。
また、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、9月に0.50%、11月と12月に0.25%ずつの利上げという見方が強まっており、利上げペースの鈍化が意識されている状況です。
なお、弊社は先週、米金融政策の見通しを変更しました(図表2)。
パウエル議長は、利上げペースはデータ次第と述べていることから、次回FOMC(9月20日、21日開催)までの雇用統計(7月分は8月5日、8月分は9月2日公表)や、消費者物価指数(7月分は8月10日、8月分は9月13日公表)が注目されます。また、8月のジャクソンホール会議(25日から27日開催)も、利上げペースを探る上で、重要なイベントと考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年7月FOMCレビュー ~2会合連続で0.75%の利上げを決定【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト