所有不動産の「名義」を巡る相続トラブルの実例

前回は、税理士と特定の相続人だけで進めた遺産分割のトラブル事例を紹介しました。今回は、所有不動産の「名義」を巡る相続トラブルを見ていきましょう。

時間が経ち「複雑化した権利関係」が招く相続トラブル

不動産の所有者というのは、通常は登記がしてあるものですが、法律上相続に際して必ず登記が必要とされているわけではありません。

 

北海道出身のTさんは、田舎の父親が亡くなったことをきっかけに、遺産を相続するかどうかという問い合わせが、税理士からあったといいます。遺産といっても、北海道の山林ですが、ひとつ問題があるといわれました。昭和の時代から登記がそのままになっており、父親の祖父とその兄弟の名義になっているといわれました。

 

税理士からは、こんなアドバイスをされました。

 

「その後の法定相続人が生きていれば、探し出してきて相続放棄の了解を得なければならず、時間とお金がかかります」

 

どうやら、Tさんの親戚は全国に散らばっており、その権利関係はかなり複雑になっているようです。しかも、山林なのに大した面積もなく、コスト・パフォーマンスを考えると遺産を放棄したほうがよさそうだという結論に達しました。

 

その趣旨を税理士に伝えると、兄から電話がかかってきて「せっかくの遺産を・・・」と文句をいわれ、それ以来、兄とはしっくりいかなくなったそうです。

共有状態の不動産は生前に処理し、権利関係をクリアに

このケースはややオーバーかもしれませんが、相続税の対象が先祖代々の土地であった場合、親の兄弟や叔父、叔母といった親戚などとの共有名義になっていることがあります。相続に際して、名義の書き換えは必要ないので、場合によっては前の世代どころか、さらに前の世代の名義になっていたりします。

 

そういう場合は、現在の法定相続人全員の了解を得る必要があり、相続放棄の手続きなど、非常に煩雑で時間がかかる作業を強いられることがあります。

 

共有状態の不動産は、可能な限り生前に処理して、権利関係をシンプルにしておくことが望ましいでしょう。そういう意味で、相続が終わったら速やかに登記を済ませてクリアにしておくことも重要です。相続税の手続きでは登記の必要がないため、いつかはしなければいけないと思いつつ、意外とそのまま放置しておく人が多いものです。

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    ソリッド(株) 代表取締役社長

    1965年生まれ。マンションデベロッパー、財閥系不動産仲介会社等を経て、不動産会社を設立。投資のアドバイスや上場企業へのコンサルティング等、難易度の高い業務を手掛ける。2001年に収益不動産のコンサルティングおよび不動産売買を主な業務とするソリッド(株)を設立。一棟投資物件検索サイト「家賃どっと入りコム」の運営や相続専門の相談も受け付けている。

    著者紹介

    富田隆史税理士事務所、A&Tコンサルティング(株) 代表取締役

    1969年生まれ。2003年1月に富田隆史税理士事務所を設立。その後、不動産鑑定士と税理士のダブルライセンスを強みとし、2006年にA&Tコンサルティング(株)を設立。資産税に特化し、不動産鑑定・税務コンサルティングを精力的に行っている。また、法人を活用した相続税対策や不動産投資など、資産家向けセミナー講師としても活躍している。

    著者紹介

    連載相続対策の仕上げ――円満な「遺産分割」の進め方

    本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続税は不動産投資と法人化で減らす』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    成田 仁,富田 隆史

    幻冬舎メディアコンサルティング

    従来より相続税対策として考えられてきた、アパートや小規模ビルなどの建設。しかし、それこそがリスクをもたらしているかもしれないとした…。 本書は、持て余している土地を収益性の良い賃貸物件に買い替える不動産投資の最…

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