(写真はイメージです/PIXTA)

夫や妻が亡くなった場合、条件を満たしていれば相続税負担が免除される「相続税の配偶者控除」を利用できます。しかし、注意点を押さえておかないと後々納税額が高くなってしまうことも……今回は、そんな「相続税の配偶者控除」の条件や注意すべきポイントについて、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

節税のつもりが…「2次相続」に注意

配偶者にすべての遺産を承継させ、配偶者控除によって、納税金額を低く抑えるということを検討される方もいらっしゃいます。

 

しかしながら、配偶者控除を活用すると納税金額が0円となるからといって、配偶者がすべての遺産を承継することをあまりおすすめできないケースもあります。

 

それは、配偶者がすべての遺産を承継することで、2次相続といって、被相続人を相続した配偶者自身が亡くなり、配偶者を被相続人とする相続が生じた場合の相続税の金額が高くなるケースになります。

 

[図表1]【平成27年1月1日以後の場合】 相続税の速算表
[図表1]【平成27年1月1日以後の場合】 相続税の速算表

 

2次相続では、「配偶者控除」は活用できず、配偶者自身が亡くなっている分、法定相続人の人数も1名減りますので基礎控除額も減ってしまいます。そのため、配偶者が多くの遺産を相続すると、それだけ配偶者の財産が増えてしまい、2次相続時の相続税が高くなってしまうということになります。

 

配偶者控除を活用する場合には、2次相続時のシミュレーションをしたうえで、2次相続時の相続税との総額を考慮して、相続税の総額が1番小さくなるような分け方を検討されるといいでしょう。

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申告期限までに必ず「遺産分割」を

配偶者控除は、前述のとおり、多額の相続税の納税を免除できるため、活用できる場合はぜひ活用したい特例の1つとなります。

 

しかしながら、相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内)までに、遺産の分け方が決まっていない場合は、未分割状態での申告となり、相続税の申告時に配偶者控除は活用できません。

 

そのため、いったんは、配偶者控除を活用しない相続税の金額を納税しなければならなくなります。

 

さらに、遺産の分け方が決まらないということは、遺産分割前の預貯金の仮払い制度を利用して預貯金の一部を解約するほかは、被相続人の預貯金の解約ができない状況となりますので、納税資金については、配偶者が自己資金で準備をしなければなりません。

 

相続税は、配偶者控除を活用しなければ高くなるケースも多いため、相続税が納税できないという理由で不本意な遺産分割協議に応じるという事態も生じかねません。

 

ですので、遺産分割協議は、相続発生後、なるべく速やかに行うようにして、相続税申告までに完了させるようにしましょう。

 

次ページ「スムーズな遺産分割」困難な場合の対処法を紹介

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