(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸物件のオーナーにとって「家賃滞納」は頭の痛い問題です。入居者側にも事情があり、すべて悪意ではないのでしょうが、いずれにしろオーナーにとっては不利益です。とはいえ、玄関ドアに「家賃払え!」と貼り紙をする、予告なく室内に押し入る、勝手に家財等を処分する…などすれば、オーナー側が罪に問われます。ここでは、家賃滞納者に「お引き取りいただく」スマートなフローを解説します。

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    法的手段は「支払い督促→少額訴訟→民事訴訟」へ

    次に、法的手段の具体的な内容について見ていきます。

     

    ◆支払督促

    「支払督促」は、賃貸住宅の住所地を管轄する簡易裁判所へ申し立てを起こすものです。書類審査のみなので裁判所に出向く必要はありません。支払督促の書面を滞納者が受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ、強制執行の申立てに進むことができます。

     

    【支払督促に必要な書類】

    ★申立書(各簡易裁判所にある定型用紙)

    ★申立手数料(滞納額に応じた収入印紙)

    ★相手方に書類を送るための郵便切手

    ★添付書類等(必要に応じて登記事項証明書)

     

    ◆少額訴訟

    「少額訴訟」も簡易裁判所へ申し立てを起こすものです。1回の審理で判決が下される特別な訴訟手続で、滞納額60万円以下の訴訟が対象となります。

     

    原告(オーナー)の訴えが認められても、滞納者の経済状況によって分割払、支払猶予、遅延損害金免除の判決が下ることもあります。また、訴訟の途中で「和解」に進み解決することもでき、その際は「和解調書」に基づき強制執行を申し立てることができます。

     

    【少額訴訟に必要な書類】

    ★訴状(各簡易裁判所にある定型用紙)

    ★申立手数料(滞納額に応じた収入印紙)

    ★相手方に書類を送るための郵便切手

    ★添付書類等(必要に応じて登記事項証明書、戸籍謄本、訴状副本)

     

    ◆民事訴訟

    「民事訴訟(不動産明渡訴訟)」は、滞納額140万円以下の訴訟は簡易裁判所へ、140万円を超える訴訟は地方裁判所へ申し立てを起こすものです。

     

    他の2つの訴訟とは違い本格的な裁判形式が取られるもので、裁判官が法廷で双方の言い分を聞き、これまでの滞納状況や内容正面郵便などの督促に関わる証拠を確認し、最終的な判決が下されます。

     

    原告(オーナー)の訴えが認められても、滞納者の経済状況によって5年を超えない範囲での分割払の判決が下ることもあります。また、訴訟の途中で「和解」に進み解決することもでき、その際は「和解調書」に基づき強制執行を申し立てることができます。

     

    【民事訴訟に必要な書類】

    ★訴状(各裁判所にある定型用紙)

    ★申立手数料(滞納額に応じた収入印紙)

    ★相手方に書類を送るための郵便切手

    ★添付書類等(必要に応じて登記事項証明書、戸籍謄本、訴状副本)

    法的措置は「滞納3ヵ月以降」から

     

    賃貸借契約関連の裁判事例を紐解くと、1ヵ月分程度の家賃滞納では「賃貸借契約の解除は無効」という判決が多く、そして契約解除を認める判決のほとんどが「3ヵ月分以上の滞納」を根拠としています。

     

    要するに、3ヵ月の滞納期間を経なければ司法は動かないということです。しかし、本来の目的は「強制退去」ではなく「家賃の回収」です。電話連絡や内容証明郵便の送付など毎月コツコツ督促を続けていくことで改善に結び付く場合もあります。

     

    また、それらの努力は後日訴訟をおこなうこととなった際、「督促のエビデンス」として有効に活用できます。まずは滞納常習者に「家賃支払い義務を果たす」という大人の責任を自覚させることからはじめるしかありません。

    まとめ

    毎月ちゃんと家賃を払っていた入居者でも、リストラ、病気、事故などさまざまな理由で生活状態が変わると、家賃滞納の常習犯になってしまうことがあります。なかには支払期限を忘れてしまう不届き者もおり、賃貸物件オーナーの悩みの種となっています。

     

    家賃滞納がはじまったら、まずは連帯保証人や家賃保証会社に「代位弁済」をお願いしましょう。滞納が慢性化するようであれば、郵便局が差出人・宛先や記載内容を証明する「内容証明郵便」を送付して滞納者に対してプレッシャーを与えることも効果的です。

     

    内容証明郵便が効かない場合は、簡易裁判所から書面を送付する「支払督促」、1回の審理で判決が下される「少額訴訟」、本格的な裁判形式でおこなわれる「民事訴訟」などの手段を取るしかありません。

     

    ※本連載は、『ライフプランnavi』の記事を抜粋、一部改変したものです。

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