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アタリ・ハズレが激しい「オーナーチェンジ物件」
不動産投資初心者のみならず、投資上級者にとっても余計な経費がかからない「オーナーチェンジ物件」はありがたいもの。
オーナーチェンジ物件の売買は「内見不可」が暗黙のルールになっており、引渡しまで室内を見るチャンスはほとんどありませんが、賃貸借契約書やレントロールなどの資料は売主から提示されるため、買主はこれらの資料から入居者や室内の様子を想像し、購入を検討することになります。
ただし、資料の信憑性には何の保証もありません。室内を確認できないうえ、現況に即した情報かどうか疑わしい資料を根拠に購入を決断するのは不安ですが、人気のオーナーチェンジ物件を取得するためには、迷いは禁物なのです。
「真実は賃借人の退去後に確認すれば良い」と腹を括って契約するしかありません。ある意味、オーナーチェンジ物件の購入はアタリ・ハズレが後からわかる“物件ガチャ”のようなものかもしれません。
取引に熱中するデイトレーダーの部屋が「ゴミ屋敷化」
中小企業経営者のAさんは、都心の一等地に建つオーナーチェンジのワンルームマンションを2,300万円で購入しました。駅徒歩5分、築9年、家賃は月12万円で利回り6%超と非の打ち所がありません。
賃貸借契約書によると、賃借人はネットビジネス系の個人事業主であることがわかりました。12万円の家賃が払えるということは、それなりの高収入を得ているのでしょう。
ところが、物件取得の1年後から家賃滞納がはじまりました。督促の電話を入れると、賃借人は主にデイトレードで生計を立てており、昨今のコロナ禍やウクライナ情勢の影響で取引に失敗し、にっちもさっちもいかない状態となってしまったとのことです。「来月になったらまとめて払う」との言葉を信じて待ちましたが、約束は果たされませんでした。
そこではじめて物件を見に行くことになります。エントランスのポストには督促状が溜まり、部屋の玄関前に建つと若干の異臭を感じました。
「まさか?」と思い恐る恐る玄関扉を開けると、室内には堆く積まれたゴミの山ができていました。念のため警察を呼んで室内を確認してもらいましたが誰もおらず、賃借人は督促の電話から間もなく夜逃げしてしまったようです。
デイトレードに熱中するあまり食事はすべてデリバリ―、食べ残しも室内に放置したままという劣悪な状況の中、非の打ち所のない収益物件はゴキブリなど害虫の巣窟と化していました。
全戸の賃借人、恐怖の「賃貸借契約解約届一斉送付」
都心の中堅企業に勤務するBさんは、東京郊外にある中古一棟アパートを5,000万円で購入しました。全戸(6戸)満室で、年間家賃収入は432万円(月6万円×6戸×12か月)、利回りは8%超とそこそこ優秀な物件です。
内見ができないため、売主(賃貸管理専門の不動産業者)から資料を提供してもらいました。外観および室内のリフォーム履歴を見る限り、それほど手を加えなくても運営できる物件のようです。
レントロールを見ると、6戸の入居者いずれも家賃滞納履歴はなく、健全な賃貸経営が続いているように見受けられます。しかし、そこに落とし穴がありました。
物件の引渡しを受けてから3年後、不動産投資の仲間から「これからは大家が自主管理する時代」と発破をかけられ、賃貸管理会社の見直しを考えはじめました。購入時から売主である不動産業者に管理を任せていましたが、改めて管理委託費を調べてみると「月額家賃の10%(年間43.2万円)」と相場より割高な料金を支払っていたことに気付きました。
これまで設備トラブルなどの報告もあまりなかったため思い切って解約を申し入れました。賃貸管理会社からは泣きつかれましたが、最終的には解約に応じてくれました。
これまでの管理資料も手渡されましたが、そこには致命的な修繕履歴はなく、このまま穏やかに賃貸運営が続けられると思いました。
ところがその直後、全戸の賃借人から一気に賃貸借契約解約届が送られてきたのです。彼らの賃貸借契約書を見直すと、「内装業」「電気工事業」「ハウスクリーニング」など、すべての賃借人がリフォーム関連の職業で、実は賃貸管理会社の下請業者でした。
退去後の室内は荒れ果てた状態で、一部のガスや電気は不通になっていました。このような状況下でもクレームが出なかったのは、売主である不動産業者の圧力によるものだったのです。
オーナーの来店を拒否…会員制ショットバーの実態
都心の駅前繁華街に建つ店舗ビルのワンフロアを不動産業者のCさんが1億円で購入しました。入居中のテナントは会員制ショットバーを経営しているとのことで、Cさんは「契約前に顧客として行ってみたいから紹介してほしい」と売主に頼みましたが、テナントから断られてしまい叶いませんでした。
家賃は月50万円、表面利回りは6%、家賃滞納なし、諸々のトラブルもなしと、資料上はなんの問題も見つけられません。
引渡しが完了しても頑なに来店拒否を続けるショットバーが気になって仕方がありません。Cさんは合鍵を所有しているのでいつでもショットバーの扉を開けることはできますが、たとえオーナーであってもテナントに断りなく入室することはできません。
Cさんも不動産業者ですからその辺りのルールは重々承知していますが、もし秘密裏に違法な営業をしていたら、Cさんのビジネスにも少なからず影響が及びます。
Cさんの悪い予感が的中したのは引渡しを受けてから半年後でした。隣県の警察署から、このショットバーについて問い合わせの電話が入ったのです。その内容は、同ショットバーの経営者が隣県の繁華街で違法パチンコ・スロット店を営業している疑いがあるというものでした。
警察からの問い合わせは電話のみで済みましたが、Cさんはこのまま放置しておくことができず、ルール違反と知りながら部下を携えてショットバーの扉を開きます。案の定、そこには大量のパチンコ台が列をなして並び、天井には無数の監視カメラが取り付けられた異様な空間となっていました。
契約前に察知する方法とは?
物件ガチャとはいうものの、不測の事態を回避する方法はあります。居住用物件なら、ポストに郵便物が溜まっている、ベランダに荷物が積み重なっている、近隣住民からゴキブリやシロアリの苦情が出ているといったゴミ屋敷の兆候は確認することができます。
サクラ物件についても、契約前に賃貸借契約書を取り寄せて入居者の勤務先が売主(不動産業者等)の関連会社でないかチェックすることで回避できます。賃貸店舗に関しては外部から客の出入りを確認することもできますし、近隣で客引きしていることもあります。
まとめ
余計な経費がかからず取得後すぐに収益が望めるオーナーチェンジ物件ですが、室内の状況や賃借人の属性について事前確認できないというデメリットがあります。
高額家賃を得られてもゴミ物件になっていたり、売主関係者が入居しているサクラ物件であったり、違法営業を続けるで悪質店舗であったりと、購入予定者の心配は絶えません。
物件ガチャとはいうものの、契約前に回避できる方法はあります。まずは現場まで足を運び、現場を見ることが大切です。