香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。
中国の不動産危機と銀行の不良債権化リスクが深刻化
中国全土では、不動産開発会社が資金繰りの影響などで建設プロジェクトが中断され、建設工事が延期する事態が相次いでいると発表された。
その影響は一部の住宅購入者にしわ寄せし、住宅ローンの支払いを拒否する人が今週に入って続出している。今週水曜日の時点では50以上の都市の少なくとも100のプロジェクトで住宅ローンの不払いが発生しており、月曜日の28件、火曜日の58件から顕著に増加していることが懸念される。
報告によると、遅延しているプロジェクトは、中国の住宅ローン残高の約1%を占め、すべての住宅購入者が債務不履行に陥った場合、3,880億元(580億ドル)の不良債権が増加することになる。
13日の取引時間中には一部の中国の大手銀行が対応を急ぎ、足元続く不動産株の急落から銀行株の売りにも波及した。また今回の住宅ローンの支払い拒否は、中国の不動産業界から一般市民にも影響を及ぼし、不動産業界の債務不履行による銀行の不良債権化が深刻となった。
中国本土の不動産価格は下落基調が続き、過去3年間の購入価格の約15%低い水準。直近発表された5月の中国新築不動産価格は9ヵ月連続で下落している。
中国の銀行は不良債権リスクについて今のところ影響は小さいとの判断だが、今後の中国の成長鈍化や市民の収入悪化、不動産販売の縮小などを背景に、より多くのリスク事象が発生することが考えられ、中国の社会安定に影響を与えると考えられる。
長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>
Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者
国際金融ストラテジスト <在香港>
京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)
シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG 銀行)に移籍し、リテール部門のマーケティング責任者、2009年からはアジアでのウエルスマネージメント事業を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、独立して、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。
2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得して、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。(香港SFC CE No. BIS009)
世界の投資機会や投資戦略、資産防衛にも精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。
● 個人公式サイト
「HASEKENHK.com」(https://hasekenhk.com/)
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