(画像はイメージです/PIXTA)

会社経営者の離婚においては、離婚相手から自社株の財産分与を求められる場合があります。財産分与は、たとえ収入が夫婦の片方のみという場合でも、原則2分の1ずつ財産を分け合います。しかし離婚相手に自社株を渡すのは、抵抗がある方も多いでしょう。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、亀子伸一弁護士に自社株の財産分与について解説していただきました。

特有財産であっても分与の対象になることがある

特有財産に該当するものは財産分与の対象にならないと述べてきましたが、実は例外があり、特有財産であっても分与の対象になることがあります。特有財産の維持管理や、特有財産を運用して利益を得たことについて、「夫婦の協力(配偶者の貢献)がある」といえる場合です。

 

1.特有財産も分与の対象として認められた事例

 

過去の裁判例では、特有財産を含む賃貸住宅について、配偶者が17年以上、入居者の募集、入居者との対応、建物の修繕、賃料の受領や催促等を行うなどの維持管理に務めていた事例で、裁判所は配偶者の貢献を認めて、特有財産についても4分の1に相当する金額を分与すると判断したものがあります(東京地判平成15年4月11日)。

 

「たまに掃除をする」程度の単なる維持管理だけでは財産分与の対象にはならないと考えられていますが、不動産の管理人に近いような態様での協力(貢献)がある場合には、財産分与の対象に含まれる可能性が出てくる、と言えます。

 

2.配当金や賃料収入のみで生計を立てている場合の注意事項

 

特有財産からの収入(配当金や賃料など)のみで生計を立てている、という場合にも注意が必要です。この場合、裁判所は、夫婦間にその収入や配当金の中から合理的といえる一定額を生計に充てる旨の合意があったと認定し、その一定額から形成されたもの(例えば、夫婦の住居として購入した不動産など)を財産分与の対象として認める、とすることがあります。

 

こうした裁判所の判断を回避するためには、以下のような対策が有効だと考えられます。

 

・配当金や賃料収入等が振り込まれる口座と、生活費に用いる口座を明確に分けておくこと

 

・不動産を購入する原資が、すべて特有財産であることを明確に裏付けられるように資料を確保しておくこと

 

・できるのであれば、夫婦間で「不動産は財産分与の対象に含まれない」との合意書を一筆残しておくこと

 

3.おわりに

 

ここまで財産分与について述べてきましたが、結婚期間が長ければ長いほど、結婚当時の財産資料を探すことが難しくなります。特に金融機関の取引明細は、通常過去10年までしか遡ることができません。過去の通帳などは捨てたりせずに、分かる場所に保管しておくことをおすすめします。

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