(画像はイメージです/PIXTA)

会社経営者の離婚においては、離婚相手から自社株の財産分与を求められる場合があります。財産分与は、たとえ収入が夫婦の片方のみという場合でも、原則2分の1ずつ財産を分け合います。しかし離婚相手に自社株を渡すのは、抵抗がある方も多いでしょう。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、亀子伸一弁護士に自社株の財産分与について解説していただきました。

結婚前から持っていた自社株は財産分与の対象になるか

相談者のTさん(男性・仮名)は、突然妻から離婚を求められてしまい、財産分与の対象となる資産についてココナラ法律相談「法律Q&A」に相談しました。

 

Tさん夫婦は結婚4年目で、妻は専業主婦。年収は3,000万円程度あり、現在1,500万円ほどの資産を保有しています。Tさんは結婚前から自社株を持っており、それによる配当が年収の半分となるそうです(確定申告をしているため証拠あり)。

 

この場合、資産の半分は特有財産となり、財産分与の対象にはならないのでしょうか。

財産分与の対象は、夫婦の協力により結婚後増えた財産

突然離婚を求められたTさん、様々葛藤はあったと思いますが気持ちを整理し、離婚協議に向けた準備を進めていく必要があります。Tさんの財産分与では、①自社株が財産分与の対象になるのか、②現在ある資産のうち、どこまでが分与の対象になるのか、が問題になりそうです。

 

1.財産分与の対象にならない「特有財産」とは

 

離婚の際に、婚姻中に形成した財産を清算するため、その分与を求めることを財産分与と言います。婚姻中に形成したというのは、簡単にいえば「結婚期間中に増えた」ということです。

 

また、財産分与で対象となる財産は「(実質的)共有財産」です。婚姻中に取得した財産は、特有財産に該当しない限り、(実質的)共有財産に分類されます。言い換えると、特有財産に該当すれば、財産分与の対象にならないことになります。特有財産の主なものは、婚姻前から持っていた財産と、婚姻後に親族からの贈与や相続などにより取得した財産です。

 

Tさんの場合、自社株は結婚前から持っていたということですので、特有財産に該当し、株式については財産分与の対象に含まれません。そのため、離婚の際に株式を分ける必要はありません。ただし、結婚後に追加取得(増加)した株式があれば、その取得分は原則として財産分与の対象に含まれることになります。

 

2.婚姻中に「増えた」額を特定することが有効

 

財産分与は、「結婚期間中に増えた」ものを対象とします。別居時あるいは離婚時の額を主張するだけでもかまいませんが、それでは結婚時に持っていた額もそのまま分与の対象に含まれてしまい、金額的には不利になります。より正確な分与すべき額を出すときには、「別居時(離婚時)の額」から「婚姻時の額」を控除した金額で考えることが有効です。

 

Tさんの例を前提に、「婚姻(結婚)時には1,000万円の資産を持っていた」と仮定した場合、婚姻中に増えた財産は500万円(1,500万円-1,000万円)ですので、「分与の対象は500万円に限られる」という主張が可能です。

 

3.特有財産から生じた金銭(配当金)の取り扱い

 

ここまで一般的な財産分与について述べてきました。しかし、Tさんの場合、さらに特殊な事情があります。配当金の取り扱いです。婚姻前から持っていた株式は特有財産に該当することを確認しましたが、「特有財産から得られた金銭」についても、原則として特有財産に該当します。自社株の配当金も原則として特有財産に該当する、ということです。

 

この取り扱いについては、特有財産からの入金額の合計を特有財産と扱って全額を対象財産から控除する考え方と、特有財産からの入金額を寄与(分与の割合)で考慮する考え方の2つがあります。Tさんにとって有利な主張は前者の主張です。

 

例えば、Tさんの場合、年収の半分である1,500万円が配当によるものですので、前者の考え方では、それだけで現在持っている財産の1,500万円が差し引きでゼロになり、結果として「分与する財産は無い」ということも考えられます。ただし、財産の内容や、配当金を得ることについて配偶者の貢献等が認められるような場合(詳しくは後述します)には、結論が変わる可能性もあります。

 

実際の離婚協議では、財産の清算という面だけでなく、扶養的な要素もふまえて財産分与を取り決めることがあります。お互い納得する形での話し合いが望まれます。

 

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