合理性を追求し過ぎて「本末転倒」になってはダメ
企業が販促目的で太っ腹な株主優待を贈っているなら、それを利用しない手はない、ということで、株主優待を狙って投資をして、毎日似たようなチェーン店でランチを食べている人がいるそうです。
金銭的なことだけを考えれば、合理的なのかもしれません。毎日の食費を考えれば、仮に株価が暴落しても、何年か持っていれば元がとれるという安心感がありますし、株価が暴落しなければその分だけ得ですから。
ただし、株主優待を狙った投資をしている人のなかには「本末転倒な人」もいるので、要注意です。ひとつは、店の選択です。たまたま自分のお気に入りのチェーン店が株主優待を発行しているから株主になった、というのであれば話はいいのですが、仮にそのチェーン店が本人のお気に入りではなかったとしたら、その選択はお勧めできませんね。
毎日気に入らないランチを無理して食べる必要はないでしょう。ほかにもっと倹約できる所がないか、生活全般を見直してみるのが先だと思いますよ。
もうひとつは、株式投資は値上がりや配当を狙って投資するのが本来だ、ということです。株主優待を狙う投資も悪くはありませんが、下記のようなリスクが伴うことを認識しておきましょう。
機関投資家の不満で、突然中止になる場合もある
株主優待は、個人投資家向けの販促という面が強いので、機関投資家は株主優待制度に不満を持っています。たとえば投資信託がレストランチェーンの株を持っていて、食事代半額サービスの対象となったとしても、使えないからです。
本来は、投資信託を持っている投資家が使えればいいのでしょうが、投資信託というのは「100人で金を出し合って1株買う」というものですから、100人が株主として食事をしに来たら、店が困りますから。
とはいえ、投資信託を運用しているファンドマネージャーは、割引で食事をするわけにはいきません。彼(彼女)は、投資家の代理として投資をしているだけで、自分は株主ではないからです。
そういうわけで、株主優待は機関投資家に評判の悪い制度なので、会社があるとき突然「株主優待の制度を廃止します」という場合があります。「会社が儲からなくなったから配当を減らします」といわれるなら納得ですが、会社が儲かっているのに突然優待券が来なくなったらビックリですよね。
しかも、優待券目当てに投資をしていた個人投資家がその株を売りに出すでしょうから、株価も暴落するかもしれません。株主優待を狙った投資には、そうしたリスクがあることを認識しておきましょう。
本稿は以上ですが、投資は自己責任でお願いします。なお、本稿は筆者の個人的見解です。また、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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