近い将来、いままで人がやってきた仕事は、人工知能(AI)とか便利なITツールのようなテクノロジーが全部奪ってしまうのではないか? という話もあるが、まだまだ数十年先くらいのレベルでは、人間の持つ創造性や社会的知性を活かした仕事は機械に置き換わることはないと思う。
人間の集中力や判断が及ばなくなるような膨大なデータから何らかの関連性を見出したり、法則を見つけたりするのはテクノロジーにお願いした方が良いと思う。別にこれはヒトでもできるのであればヒトがやれば良いことであって、何でもかんでもテクノロジーにお願いしなきゃダメかと言えば、そんなことはない。お願いできるところとできないところを考えるのは、やはり人間にしかできないことだろうと思うし、お願いするかどうかを考えるのも人間。つまり、疑問を抱いたり、課題を特定したりするのは、ヒトの役目なのである。
だからこそ、真面目に包括的にスキルを習得することを提案したい。
まず、管理職の役割と磨いてほしいスキルセットを俯瞰するところから始めたいと思う。
管理職が務まらない二つの不足
管理職の役割とスキルの俯瞰
最近の管理職に求められる役割の定義はかなり奥が深い。学問的な研究がだいぶ進んできたこともあり、管理職の役割の定義や分類などを含めて、バラエティーに富んできたと言った方が良いかもしれない。
だからと言って基本的な役割がいまと昔で大きく変わったかというとそうでもないと思う。分類好きの学者先生たちの好みで、定義を作るときの切り口次第で、微妙に違うようにみえるだけのように思う。個人のスキルを考えるとき、いま必要なこと、これから必要になるものを整理することが大事だと思うが、分類がどう、定義がどうなんていうのは、あまり意味がないと思う。
個人というものは、社会や組織という大きな視点から見れば、コミュニティやグループを形成している最小単位でしかないかもしれない。しかし、学問の研究対象となった集団全体の傾向や行動特性を個人にあてはめることはできないのである。だから人間は面白く、難しいのである。
人は色々な経験を通じて(書籍を読むことも含まれる)、自分なりに色々なことを理解し、整理しているわけである。自分を磨くために成果を出すということは、一体何を意味しているのか? 成果を出し続けるハイパフォーマーは、なぜハイパフォーマーでいられるのか? などについて、体系的な理解を獲得したり、自分の能力を向上させるために整理されたツールを活用することは良いアプローチだと思う。
自分が役割を果たすために、あるいは役割以上のことを達成したいと思ったのなら、更に自らのパフォーマンスを上げるために、あるいは生産性の高い組織を作るために、どんなスキルを磨いたら良いのか? どんな戦略を立て、また実行していく必要があるのか? を、実際に自分の置かれた状況に当てはめて実践することが重要だと思う。そんなときに本書を活用してほしい。