「ぼけ」「痴呆」から『認知症』へと用語が変更になったワケ

かつて「家族の恥」とされた「認知症」について紹介。高齢化が急速に進むなか、高齢者が自立して健やかな老後を送ることを目的として、医師が患者向けに解説します。

認知症とはどのような病気か?

脳には、「記憶」というとても大事な働きがあります。認知症は、いろいろなことを「記憶する(覚える)」あるいは「記憶していることを引き出す(思い出す)」ことが難しくなる病気です。

 

認知症は病気なのですが、病名というよりも症状(症候群)で、いろいろな病気が原因となって認知症になります。

 

詳しくいいますと、認知症とは、慢性あるいは進行性の脳疾患によって記憶、思考(理解、判断)、見当識、計算、学習、言語、感情(喜び、楽しみ)など多様な高次脳機能の障害を呈する症候群です。

 

それによって、複数の認知障害が現れ、健常者を基準とする社会生活に支障を来すようになった状態をいいます。

 

複数の認知障害とは、もの忘れ、行動異常(暴力、徘徊、無為など)、異常な心理状態(幻覚、妄想)、抑うつ(アパシー、無気力、感情鈍麻)などですが、原因脳疾患、障害部位や進行速度もその人ごとに異なり、認知障害の症状の現れ方も同じではありません。

 

認知症の分類や、認知症を来す疾患について、その主要な疾患は後述しますが、最も多いのは脳細胞がゆっくりと死んでいく変性疾患であるアルツハイマー型認知症、次いで多いのが脳血管障害(脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化症)の後遺症や合併症として起こってくる血管性認知症、3番目に多いのが変性疾患のレビー小体型認知症です。

 

その他、これらの混合型や変性疾患の前頭側頭型認知症があります。なお、脳血管障害による認知症は、当初の脳血管性認知症から血管性認知症に変更されました(脳卒中治療ガイドライン)。その他の疾患については付録1の一覧表(認知症を起こす病気)をご参照ください。

「ぼけ」、「痴呆」から「認知症」へと用語変更

認知症は、以前、「ぼけ」、「老人ボケ」、「痴呆」、「痴呆症」などといわれておりましたが、平成16年、痴呆症から認知症へと用語が変更されました。これは、表記の単なる変更ではなく、この病気の捉え方に対する変化が背景にあるものです。

 

先例として、今から46年前に書かれた、有吉佐和子氏の小説「恍惚の人」(昭和47年)があります。日本社会における高齢者の介護問題を世間に知らしめた作品ですが、「恍惚の人」はすなわち「ボケ老人」を意味した言葉として、ちょっとした流行語となり、この作品は映画化(昭和48年)もされました。この小説は今日の問題を見抜いた高齢者の「ぼけ」を先立って正面から取り上げたといっていいでしょう。

 

ボケ老人の問題は当時の社会では、家族の恥とされ、世間から隔離され、そのことを話題にするのはタブーとされていました。その当時の日本の平均寿命は男性が69歳、女性が74歳で、今後予想される高齢化社会をわずかに意識するようになったばかりでした。65歳以上の高齢者は、現在は人口の26.7%(平成27年9月)ですが、当時は7%に過ぎなかったのです。

 

もともと、痴呆の「痴」という字はヤマイダレに知ると書きます。すなわち、「知ること」が病気になって、ボー(呆)とする状態になることを言い表しています。

 

痴呆症すなわち認知症(以下、認知症に統一します)は、心筋梗塞や肺炎などと同じように、病気であり、多くの原因があります。この病気に罹患した人は、人生の新しい段階に入ることになり、健康な人と比べれば生活する上での機能が低下したと見なされます。

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本記事は、2018年5月刊行の書籍『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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