本記事は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです(取材日:6月26日)。円安、株安、金利上昇(債券価格下落)……おまけに暗号通貨も大幅安。とはいえ、現金で持っていても、昨今の物価上昇で実質的な資産価値は目減りしている状況です。そのようななか、いったいどのような投資をおこなえば資産を守ることができるのでしょうか。荒れた相場でこそ真価を発揮する「ヘッジファンド」についてみていきます。
「ヘッジファンド分析」の意義・メリット・活用方法
最近では、年金運用のポートフォリオにおいても、ヘッジファンドへの投資や自社内でのモデル開発が進むなど、各種戦略を含めたヘッジファンドの市場規模は中長期的に拡大している。
1990年には390億ドル規模であったグローバルのヘッジファンド残高は2022年初で4兆ドルを超えたとの試算(HFR)もあり、各種ヘッジファンド戦略が市場に与えるインパクトは格段に大きくなっている。
そういう意味でも①ヘッジファンドのファンドフローや残高が大きく積み上がった戦略を継続的にフォローすることでマーケットの需給分析に活かす重要性が増しているといえよう。
また、②足元のグローバルマーケットの動向(過去や足元の伝統的資産の値動きや、その他オルタナティブ資産のリスク・リターン・相関動向等)を包括的に捉えたうえで、どのような相場局面で、どのようなヘッジファンド戦略が強みを発揮するのか。また、どのような弱みによりパフォーマンスが悪化する傾向があるのか(または足元の市場でそのような特性が出ているのか、いないのか)をフォロー・分析し、実際のヘッジファンド投資の管理(ポートフォリオにおけるヘッジファンド投資の比率調整等)に活かすことも重要である。
加えて、③「守りながら攻める持続可能な投資」の観点では、足元の各種ヘッジファンド戦略のプロファイル(各戦略のパフォーマンスやその他ファンド統計)等を、マーケットのリスク指標(異常検知等)のひとつとして活用し、適切なアロケーション<タクティカル※含む>につなげることも肝要だろう。
※「タクティカル(戦術的)アセットアロケーション」とは、景気サイクル、市場の変動や資産間のミスプライシング等に応じて、資産配分比率を機動的に変更する運用・投資手法(出所:東海東京調査センター作成)。
続いて、9つの主なヘッジファンド戦略について、概要を説明する。
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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
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