「担当者の9割は素人」と思え
宅地建物取引業法には、不動産の事務所には必ず「5人に1人」の割合で、宅地建物取引士の資格を有している人間をおいておかなければならない、という決まりが定められています。
10人の事務所なら2人、13人の事務所であれば3人、宅地建物取引士が必要です。
この決まりは、裏を返せば5人に4人、実に80%の不動産仲介業の担当者は、不動産に関して「素人」であることを物語っています。
さらにもっといえば、私たちが出会う担当者は、90%以上の確率で宅地建物取引士の資格をもっていないことでしょう。なぜなら、宅地建物取引士は契約の際の重要事項の説明をはじめとした、さまざまな専門的業務を抱えているため、外へ出て行く時間などほとんどないのです。ですから、顧客と接することの多い担当者は、必然的に営業トークばかりが得意な、普通の人よりもちょっとだけ不動産に詳しい、素人同然の宅地建物取引業従事者である可能性が高い、ということになります。
家の精:実際には、宅地建物取引士の資格をもっていなくても、不動産のことをたくさん勉強している熱心な担当者もいるだろうが、あまり過度な期待をもってはいけないということだな。
アサミ:なんでもかんでも任せきりにしたり、担当者の言うことを鵜呑みにするのは危険ね。
不動産仲介業者の担当者は、不動産の専門的知識を豊富に有しているとは限りません。しかし一方で、不動産仲介業者を訪ねる顧客は当然「この担当者は不動産に詳しい」と思い込んでいます。このような埋まることのないギャップが、大きなトラブルの元となります。
例えばよくあるケースとして「買主からの不具合クレーム」があります。不動産に関する不具合については、事前に念入り過ぎるほど吟味しているはずで、売主と仲介業者はもちろんのこと、仲介業者と買主の間でも十分な確認を行い、契約を交わしたうえで売買が成立しているはずです。それでも予期せぬ不具合が発覚して買主からのクレームが入り、誰に責任があるのかが問われるトラブルも、少なからず起こり得るのです。
このようなトラブルが発生したとき、いちばん痛い思いをすることになるのが売主です。「こちらで対処します」と潔いことを言ってくれる仲介業者はごく少数で、多くは「事前に報告いただけていなかった不具合なので、修繕費用をお願いします」という流れにもっていこうとします。「いやいや、事前に一緒に確認しましたよ」と言っても、「記憶がない」とか、挙句には「担当者は異動になりました」と言って、責任を回避することに必死で売主のフォローをいっさいしない仲介業者が実際にいるのですから最悪です。
トラブルの原因は、もちろん売主にはありません。担当者が素人で、手っ取り早く売買を成立させたいがために、細かい確認を怠って交渉を進めていったことです。買主との間でこのような悲劇が展開されないよう、細かい部分まで徹底してサポートしてくれるところが信頼できる仲介業者ということになりますが、なかなかその見極めが難しいのも事実です。
家の精:とにかくこちらが心掛けたいのは、仲介業者は税金のことや保険のことはもちろん、不動産の法律に関しても、素人なんだという前提で付き合うということ。
アサミ:こちらの問いかけに対してはぐらかされそうになったら、何度も確認をしていくべきね。
家の精:その場しのぎで知ったかぶりをする担当者もいるから注意が必要なんだ。なんでもかんでもハキハキと答えてくれる人よりも、微妙な問いかけに対しては「確認します」と言ってくれるような人を信用するほうが身のためだな。
露木 裕良
一般社団法人「不動産売却支援ネット」 理事長
「不動産高く売りたい.com」 サイト運営
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