不動産は「一生に何度も買う」ものではないので…
普段の生活のなかで購入する日常的な商品であれば「前にここで買ったら品質が悪かったから、次は違うところで買おう」とか「広告ではいいことばっかり書いていたが、実際に行ってみたら大したことはなかった」というように、経験を積み重ねながら対処法を身につけ、買い物の精度は上がっていくものです。
しかし、不動産取引というのは一生に一度あるかどうかの大イベントです。「今回は失敗したけど次からは気をつけよう」とはいきませんし、一度契約したら「価格に満足いかないから、やっぱり返金してほしい」は当然通用しません。失敗の許されない、取り返しのつかない取引なのです。
売主には経験もなければ適切な対処法も身についていません。この事実があるからこそ、一部の不動産仲介業者は顧客である売主の知識と経験不足を逆手にとって、自分たちの利益を優先した手口を駆使し、「いい価格で取引ができましたね!」と調子のいいことを言って、売主をカモにしています。
アサミ:私も不動産の知識ゼロだったから、不動産屋さんの言うことに「そういうものか」と納得して、契約しちゃったわ。
家の精:契約はその場の勢いで決めるのではなく、一度持ち帰って自分なりに知識を身につけてから最終決断をすることが重要だ。
「早く売ってしまいたい」という焦りに付け込まれる
売主が仲介業者のカモになってしまう理由として、早く売ってしまいたいという焦りの気持ちが挙げられます。
売主は、現金が欲しいか不動産に関わるトラブルを回避したいがために、不動産を売ることを急いでいます。例えば不動産の買い替えがしたかったり、共有状態を解消したかったり、相続税の支払いが必要だったりといった事情から、短期間での売却を希望しています。
いずれにしろ「早く現金化したい」という気持ちが先走っている傾向にあるため、「ちょっと安くてもいいや」と妥協心理が働きがちです。
しかしその「ちょっと安く」というのも、例えば「7000万円の希望額だったものが6800万円の売却価格で決着した」というような減額で、数百万円も下がってしまうケースが多いのです。
不動産という大きな価値をもつものの取引のために金銭感覚が麻痺しがちですが、数百万円であれば車が買えてしまう差額です。本来の感覚でいえば、絶対に阻止したいレベルの値下げ額だと思います。
悪質な仲介業者というのは、こういった顧客心理を十分に熟知しています。相続税が必要とか離婚して財産分与しなければいけないとか、顧客の弱みに付け込んで仲介業者が主導権を握れるよう営業を仕掛けていきます。双方代理も囲い込みもお手のものです。
仲介業者は別段、個々で特殊な技能をもっているわけではないのです。いくつもの経験を積み重ねて蓄積した、自社が利益を最大限に得るためのノウハウをもっていて、これを担当者全員で共有しています。すなわち、売主にとって「思っていたより高く売れなくなった」という結果になったとしても、後腐れのないように終わらせる術を身につけているわけです。
アサミ:私も、家の精の助言がなければ、不動産屋さんの手口に気づくことなく、取引を進めていくことになっていただろうなあ。
家の精:そう。こちら側に知識や経験がないから、不動産仲介業者のいいカモにされてしまうんだ。
露木 裕良
一般社団法人「不動産売却支援ネット」 理事長
「不動産高く売りたい.com」 サイト運営
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