不動産仲介業者が気にするのは「自分たちの利益だけ」
不動産仲介業者に不動産の売却を委ねる際は、「不動産仲介業者は、自身の利益のことしか考えていない」という前提で交渉に臨むようにしましょう。
業者が自社の利益を追求することは、資本主義社会においては至極自然な考えであり、決して否定すべきことではありません。また、自社の利益を追求したことで、売主にも多大な利益をもたらすことができれば、まったく問題はないのです。
しかし、一部の不動産仲介業者の悪質極まりない手口を知ると、彼らと気持ちを等しくし、対等な関係で不動産の売却を成し遂げることは、不可能に近いと痛感することになるでしょう。
まず私たちが知っておきたいのは、担当者の営業に乗せられ、「なんだかお得そう」「こちらのことを考えてくれていそう」と、浅い知識のまま勢いで契約してしまうことが、非常に危険な行為であるということです。
ここでは知識をきちんと身につけていただくために、不動産仲介業者と交わす契約について説明します。
相談に来た売主に対して、頻繁に使われる営業文句が「お客さまのご希望額よりさらに高くても、買手がつく可能性はありますよ」です。想定よりもさらに高い価格で売りに出してくれるという意気込みに、売主は「土地の価値をよく分かってくれている!」と、思わず心を許してしまいます。愛想のいい担当者であれば、なおさら「ここに任せてみよう」という気持ちが高まっていくことでしょう。
売主との距離が近づいたタイミングで、担当者は専任媒介契約を持ちかけてきます。もちろん売主はこの契約の内容をよく知りませんから、説明を求めるわけですが、担当者は「専任ならより高く売れます」「早く売りたい方は、皆さん専任を選ばれています」と、売主が前向きになれる文句ばかりを並べて、契約締結を急がせるのです。
こうして売主は不動産仲介業者と専任媒介契約を結ぶわけですが、本来であればメリット・デメリット含めて、売主は契約の内容を十分に知っておくべきです。
それは具体的にどういうものかというと、専任媒介契約だと「その不動産会社しか仲介ができない」という制約です。
似たような契約で専属専任媒介契約というのもあるのですが、これはさらに制約が厳しく、例えば仮に売主自身の力で買主を見つけることができたとしても、契約した不動産会社を介して売買をしないといけなくなります。
残る一般媒介契約では、ほかの不動産会社とも並行で契約でき、売主から見ればよりたくさんの販売員をつけることができるため、買手候補をより見つけやすくなるメリットがあります。
アサミ:それなら、いろんな不動産会社で営業代行してもらえる一般媒介契約を結ぶのがダントツにいいんじゃないの?
家の精:そんなこともないんだよなあ。一般媒介契約の場合、不動産屋側に「必ず仲介できる」という確約があるわけではないから、力を入れて営業をしない可能性もあるんだ。
専任媒介契約であれば自社の仲介によって成立することがほぼ確実ですから、仲介業者も営業に力を入れます。「専任なら経費をたくさんかけられるので、チラシも作りますし、新聞の折り込みもたくさん入れられます」というのは、専任媒介契約を結びたい業者のよく使うセリフです。言われた側も、「確かにそのほうが売れやすいかも」「責任をもって営業してもらえないのは困る」という心理から、あまり深いことを考えずに専任媒介契約を結びます。
以上のような各契約の違いや、メリット・デメリットを踏まえてから、契約を結ぶことが大切です。業者は自分たちの利益を第一に考えていますから、専任媒介契約を結ぶと、彼らの営業次第で売却できるか否かも、そして売却価格がいくらになるかも、業者の思うツボということになります。
「業者側だって、高ければ高いほど利益も大きくなるのだから、売主と目的は同じ。だから専任媒介契約で全力で頑張ってもらうのがいいんじゃないの」と思うかもしれませんが、実態を覗いてみると、実に巧妙な手口で、売主の利益を無視し、自分たちの利益だけを求める、業者のダークな狙いが透けて見えてきます。続けて種明かししていきましょう。