◆契約の実態
家の精:ふーん。それで俺への相談なしに、その場でオダテル不動産と専任媒介契約を結んじゃったわけね。
アサミ:そうだけど……やっぱりまずかった?
家の精:出かける前、なんて言ったっけ?
アサミ:「向こうからオファーがあっても、その場で承諾しないように」って……。
家の精:覚えてるなら、なんで契約しちゃったんだよ!
アサミ:だって条件良かったから……オダテル不動産の人たちもすごくいい人そうだったし。
家の精:甘いなあ。あのなあ、専任媒介契約を結んじゃった以上は、そこ経由でしかこの家の売買取引ができないんだぞ?
アサミ:その説明は受けたよ。その代わり一生懸命販売に力を注いでくれるらしいから、いいんじゃないの?
家の精:口先だけかもしれないぞ。
アサミ:でも定期的に報告もしてくれるみたいだし。それにさっそく不動産情報をネットに掲載してくれるって言ってたから。買いたい人はすぐオダテル不動産に連絡してくれるんでしょ。
家の精:確かに連絡はあるかもしれないが、不動産屋の連中が「実はもう買手がついちゃいまして」って返事して断ってたらどうするよ?
アサミ:えー!? なんでそんな嘘つくのよ。売れなくちゃ不動産屋さんにとってもいいことがないじゃない!
家の精:分からんぞ。自分たちで買手候補も見つけて、売手からも買手からも仲介手数料を、ダブルで取ろうっていう魂胆かもしれん。
アサミ:仮にそうだとしても3000万円で売れるなら私は別にいいけど。
家の精:とにかく専任媒介契約を結んじゃった以上は、不動産屋のやりたいようにやるだろうよ。買手が見つかるまで余裕綽々で営業するだろうし、見つからなけりゃ値下げの交渉もくるかもな。契約書にも「必ず3000万円で売ります」とは書かれてないしな。向こうの思うツボだ。
アサミ:精霊のくせに見方がひねくれ過ぎじゃない? もう少し信頼してあげようよ。
家の精:甘いなあ。不動産売却は基本、仲介業者とかは信頼しないほうが賢明だ。契約内容がすべてで、口約束は守らない主義だよ。
アサミ:(言われてみれば確かに……口先では気前のいいことばかり言ってたけど、契約書には盛り込まれてないな)
家の精:な、少し不安になってきただろ?
アサミ:どうしよう。もう契約しちゃったし、今さら後には引けない……。
家の精:規則で3カ月はやらんといかんからな。逆に言えば3カ月やってもらって、気に入らないことがあれば更新しなければいいだけだ。しばらく様子を見よう。とにかく次からは、きちんと事前に俺に相談するように!
アサミ:……分かったわ。
露木 裕良
一般社団法人「不動産売却支援ネット」 理事長
「不動産高く売りたい.com」 サイト運営
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