相続放棄を手続きしないで放置した場合のリスク
相続放棄を検討しているにもかかわらず、手続きをしないでいるうちに期限を過ぎてしまった場合には、次のリスクが生じます。
期限を過ぎると相続放棄ができなくなる
所定の期限を超過してしまった場合、原則としてもはや相続放棄をすることはできなくなります。
仮に被相続人に借金がある場合には、原則どおり借金を引き継ぐこととなり、返済していなければなりません。場合によっては、自己破産なども選択肢の一つとなります。
なお、財産の数が多いなど相続放棄をするかどうかの検討に時間がかかる場合には、あらかじめ家庭裁判所で所定の手続きを踏むことにより、相続放棄の期限を伸長してもらうことが可能です。
検討が間に合わない可能性がある場合には、あらかじめ伸長の手続きをしておきましょう。
準確定申告や相続税申告を放置した場合のリスク
申告義務があるにもかかわらず、申告をしないまま準確定申告や相続税申告の期限を過ぎてしまった場合には、次のようなリスクが生じます。
無申告加算税や延滞税が課税される
本来の申告期限までに申告や納税をしなかった場合には、利息としての意味合いを持つ「延滞税」と、ペナルティとしての意味合いを持つ「無申告加算税」が課税されます。また、悪質とされた場合には無申告加算税よりも更に重い重加算税が適用されます。
延滞税の率は年によって異なりますが、令和3年1月1日から令和3年12月31日までの期間では下記のとおりです。
●納期限の翌日から2月を経過する日まで:年2.5%
●納期限の翌日から2月を経過した日以後:年8.8%
無申告加算税は、その申告時期や金額により本来納付すべき税額の10%から20%です。
また、無申告により重加算税の対象となった場合の重加算税の税率は、原則として本来納付すべき税額の40%となります。無申告のペナルティはかなり重いものとなっていますので、申告が必要な場合には必ず期限内に申告と納税を済ませるようにしましょう。
期限内に申告すれば使えたはずの特例が使えなくなる
相続税には、税額を抑えることのできる特例がいくつか存在します。中でも税額への影響が大きなものは、次の2つです。
●小規模宅地等の特例:要件を満たすことで、土地を最大8割減で評価して相続税を計算することができる特例
●配偶者の税額軽減:配偶者が相続で取得した財産のうち配偶者の法定相続分相当額か1億6,000万円のいずれか大きな額までは相続税が無税となる特例
ただし、これらの特例は、期限内に申告することが適用要件の一つとなっています。仮に、1日でも申告期限を過ぎてしまった場合には、もはやこれらの特例の適用を受けることはできません。
期限内に申告しなかったことで特例の適用機会を逃してしまえば、納付すべき相続税が大きく増えてしまう可能性があります。
相続登記を手続きしないで放置した場合のリスク
相続登記は、面倒に感じる方の多い相続手続きの一つです。すぐに売るわけではない土地や建物であれば、すぐに名義変更をしなくとも実害がない場合も多く、手続きを放置してしまう場合もあるでしょう。
しかし、不動産の名義変更を放置すると、次のリスクが生じます。
登記しようとした際に手続きが難航するおそれがある
不動産を売却したり、抵当権をつけるなどお金を借りる際の担保に入れたりするためには、故人名義のままでは手続きすることができません。すぐには売却や担保提供の予定がなかったとしても、将来このような必要性が生じた場合には、きちんと名義を正す必要が生じます。
いざ名義変更をしようとした際に、名義人となっている人が亡くなってからかなりの期間が経過している場合には、非常に骨の折れる手続きが必要となるでしょう。なぜなら、当初の相続人の中に亡くなった人がいれば代替わりが起きており、本来の相続人だった人の子や配偶者などの同意を得る必要があるためです。
また、相続人の中に認知症となってしまった人がいれば、成年後見人などを付さなければ原則として手続きをすることができないためです。相続人の中には、名義変更の条件として自分の法定相続分をしっかり請求する人もいることでしょう。
このように、年数の経過により代替わりが起きたり相続人の事情が変わったりすると、当初よりもさらに手続きに手間がかかる可能性が高くなるのです。そのため、相続登記は名義を取得することが決まった時点で、できるだけ早期に済ませておいたほうが良いといえます。
2024年度以降は過料の対象になる
上で記載をしたとおり、2024年度以後は3年以内の相続登記が義務化されます。施行日以後は仮に特段の理由がないまま期限を超過してしまうと、10万円以下の過料が課される可能性がある点も、相続登記を放置するリスクの一つとなります。
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