(写真はイメージです/PIXTA)

相続人のうちの1人が、口座の管理人であったことをいいことに、被相続人の預貯金5,000万円のうち、4,000万円を無断で使い込んでいたことが発覚。ほかの相続人はどうすれば遺産を取り返すことができるのでしょうか。相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が、相続人がとれる対応策を解説します。

被相続人の預貯金が使い込まれていた…どうすべき?

相続人のうちの1名が、被相続人の預貯金の通帳を管理しており、被相続人の「生前」に、その通帳内のお金を使い込んでいた場合を想定します。

 

このような場合に、他の相続人は、お金を使い込んでいた相続人に対して、相続発生後になんらかの請求ができるのでしょうか。

 

まず、相続が発生した場合、預貯金などの金融資産については、原則として、相続発生時の残高(正確には遺産分割をする時点)を基準として相続をすることになります。

 

たとえば、被相続人が亡くなる1年前に、被相続人名義のA銀行の口座には5,000万円が入っていたとします。当該口座を管理していた相続人が預金を使い込んでしまい、相続発生時に残高が1,000万円となっていた場合には、この残額の1,000万円を基準として相続を考えることになってしまいます。

 

しかし、他の相続人としては、そのような不合理なことを容認することは難しいと思います。

 

そこで、今回は、一部の相続人が、被相続人の預貯金からお金を引き出して、無断で使い込んでしまった場合、他の相続人がどのような手続きをとることが可能なのかということについて解説いたします。

時効に注意…「不当利得返還請求」の中身

被相続人の預貯金を、一部の相続人が使い込んでいた場合、他の相続人は「不当利得返還請求」や「不法行為責任に基づく損害賠償請求」を行うことが可能です。ここでは、「不当利得返還請求」について解説していきます。

 

不当利得返還請求(民法703条)に関しては、次のように定められています。
「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

 

「不当利得返還請求」が認められるためには、

 

①請求者が損失を被ったこと(預貯金が消滅したこと)、
②被請求者側に利得があること(被請求者側が払戻金を取得したこと)、
③「①と②」の因果関係、
④被請求者の利得に法律上の原因がないこと(被請求者に預貯金の引出し権限がないこと)

 

の要件が必要になります。

 

お金を取り戻したいと考える相続人は、これらの要件を、被相続人の預金の取引履歴や、生活状況などが分かる資料などを用いることにより、丁寧に主張立証していく必要があります。

 

なお、不当利得返還請求には、時効もありますので、ご注意下さい。

 

不当利得返還請求の時効は、

 

①権利を行使することができることを知ったときから5年間、
②権利を行使することができるときから10年間

 

となります。もし使い込みが判明してから、そのままなにもせずに放置しておくと、権利が時効により消滅してしまうため注意が必要です。預金の使い込みなどが判明したら、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。

 

注目のセミナー情報

​​【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術

 

【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術

次ページ交渉、裁判…「不当利得返還請求」の進め方

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧