急速な高齢社会化に伴い様々な健康問題が発生する現代日本。人々は介護という課題にいかに向き合うべきか。英国老年医学の母、マージョリ・ウォレンの実例をもとに解説します。

予測を超える我が国高齢化の速さとその影響

一般にその国の65歳以上の人口が7%になると、高齢化社会といい、14%に達すると高齢社会と呼びます。高齢化社会から高齢社会への移行には、ドイツで412年、イギリスで46年、イタリアで59年、フランスに至っては114年と1世紀以上の年月がかかっています。ところが我が国では、わずか24年で高齢社会に達したのです。

 

この速さは、日本中の誰も予測できませんでした。1975年の高齢者人口は、7.1パーセントと欧米より低い位置にありました。そのときの厚生省や人口学者は皆、今後の2020年には18.8パーセントになると予測していました。それが28パーセントと世界首位に達したのです。まさに革命的な速さです。世界中がその速さに驚きました。

 

このような老人の急速な増加は、行政の予測を遥かに超えるもので、その対応には大きな立ち遅れがありました。高齢者には、さまざまな病気があり、介護やリハビリテーションを必要とする障害者が、急増します。これは大きな社会問題です。

 

2000年になって、ようやく介護保険が導入され、誰もが高齢障害者と向き合うようになりました。しかし、今後も進行する高齢社会に対して、打つ手はないのでしょうか。

女性が高齢社会を救う

ジャレド・ダイアモンドは、進化生物学、生物地理学でよく知られた学者です。1997年に書かれた『銃・病原菌・鉄』は、世界的なベストセラーになりました。そのダイアモンドが、我が国の高齢化の解決は女性にあると述べています。

 

日本は経済的には先進国ですが、女性に関してはいまだに後進国です。国会議員の女性の比率は約10%で、世界で165位です。これに対し、北欧諸国は軒並み40%です。これは自分のことしか考えない我が国の男性国会議員の横暴によるものです。恥ずかしいと思わないのでしょうか。働き方改革などは口先だけのことです。女性の閣僚は、2人か3人に過ぎません。

 

明治の頃、福沢諭吉は女性を尊敬し、自分の妻には「さん」をつけて呼びました。宴会などの後片づけなどは、福沢が率先して行って男性に手伝わせ、女性の手を借りることはなかったのです。女性の地位向上は、福沢の説く文明開化のひとつの在り方でもありました。

 

国会議員の4割を女性とするという議案を通すべきなのです。野党も女性党としての党則を強調すれば、票が飛躍的に伸びるでしょう。

 

ダイアモンドは次のように述べています。

 

「日本人の女性は教育レベルが非常に高い。本来、日本人女性は優秀な労働者です。人口の半分を占め、教育レベルが高くて健康な女性が働ける環境を作れていないことが、日本の問題なのです」

 

我が国の女性は、教育程度が高いので、即戦力になります。欧米のように自立し、政治に参画して平和と民主主義に貢献してもらいたいと、心から念願しています。

 

ちなみに我が国の現在の高齢者の能力も、以前より機能がすぐれていることが指摘されています。1992年と2002年の歩行速度を比較すると、10年の差異があるといわれます。つまり男性も女性も、今の70歳代は昔の60歳代に匹敵します。その能力を大いに仕事に活用すべきです。ここにも新しい能力の開発があります。

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本記事は、2021年7月刊行の書籍『健康長寿の道を歩んで』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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