(※写真はイメージです/PIXTA)

築17年のアパートを所持するオーナー。12年以上住んでいた借主が退去することとなりましたが、ペット飼育による汚損が目立つ状況でした。オーナーは修繕費を請求したものの、借主は支払いを拒否……オーナーは全額負担しなければならないのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

工事費用の負担が決められるポイント

この事例では、その他、居室ドア縁、巾木、居室石膏ボードについても、猫の爪研ぎによる破損等が生じていることを特別損耗と認めつつ、上記で述べたような事情を個別に考慮して、賃借人の費用負担割合をそれぞれ、居室ドア縁(20%)、巾木(25%)、居室石膏ボード(50%)と認定しています。

 

以上のように、ペット飼育による傷・汚損等が特別損耗だとしても、

 

・新築時(またはリフォーム時)からどの程度の年数が経過していたか
・全面張替(交換)工事を行った場合において、傷・汚損が生じていた部分が全体のうちのどの程度の割合だったか

 

という点を考慮して工事費用の負担が決められることを示した裁判例といえます。

 

もっとも、フローリングについては、玄関からリビング、キッチン、寝室まで間仕切りがないタイプであり部分張替えではなく全面張替えが必要だったとして全面張替え費用を賃借人に負担させた裁判例もありますので(東京地方裁判所平成27年1月29日判決)、ケースバイケースで考えていく必要があるでしょう。

 

※この記事は2022年5月2日時点の情報に基づいて書かれています(2022年10月31日再監修済)。

 

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所

※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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