写真:PIXTA

マルコス新政権の経済関連閣僚が続々と決まり、今後のフィリピンの行く末がみえてきました。一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が解説します。

フィリピン…物価の状況と今後の見通し

さらにマルコス氏は、コメ価格を1キロあたり20ペソに引き下げること、エネルギー不足への対応からバターン原子力発電所を再開することも示唆しています。

 

フィリピン統計局(PSA)によると、フィリピンのインフレ率は5月に3年半で最高水準に達しました。食料と輸送費の高騰が主な要因です。消費財とサービスの全体的な価格は5月に前年比5.4%上昇し、4月の4.9%と1年前の4.1%よりも加速しています。

 

これは、フィリピン中央銀行(BSP)による5〜5.8%の予測範囲の中間点で、2〜4%のインフレターゲットを2か月連続で大きく超えてきました。このインフレ率は、2018年11月に記録された前年比6.1%の高水準以来となります。

 

要因は、不安定な世界的な商品価格相場の中でのサプライチェーンの混乱です。さらなるインフレの加速を阻止するためのタイムリーな介入を可能にするための綿密な監視が必要であるとフィリピン中央銀行(BSP)総裁で次期財務大臣のベンジャミンE.ディオクノは声明で述べています。

 

2022年のこれまでのところのインフレ率は4.1%であり、中央銀行の予想値4.6%をまだ下回っています。

 

5月のインフレ率上昇は食品とノンアルコール飲料、電気・水道・ガスなどのユーティリティ、そして輸送価格の上昇によって引き起こされました。野菜や根菜などは15.2%増加し、魚介類は6.2%増加しました。

 

一方、次期マルコス政権での主要政策の一つでもある主食の米価格は、うまく管理されていて、マニラ首都圏(NCR)で0.3%低下し、NCR以外の地域でも1.8%上昇に留まりました。

 

原油価格が上昇し続けたため、5月の輸送コストは14.6%上昇し、ガソリンは47.2%、ディーゼルは86.2%急上昇しました。エネルギー省によると、年初来ガソリン、ディーゼル、灯油の価格は1リットルあたりそれぞれ23.85ペソ、30.30ペソ、27.65ペソ上昇しています。

 

また、P30からP110までの最低賃金引き上げが6月から14の地域で実施されますので、これもインフレアップ要因です。

 

国家経済開発庁(NEDA)は、米と豚肉の輸入関税率を引き下げ、トウモロコシの関税を引き下げる大統領令の延長により、物価上昇を緩和させています。また、大統領令では、電力価格を下げるために、石炭輸入に対する7%の関税を一時的に撤廃しました。

 

中央銀行総裁のディオクノ氏は、は6月23日の政策決定会合に先立ち、引き続きインフレの進行と経済再開・成長の見通しを注意深く監視すると述べています。

 

BSPは、2018年以来初めて政策金利を5月19日に25ベーシスポイント(bps)引き上げ、物価上昇の鎮静化に努めました。

 

さらに、中央銀行は、ペソの急激な弱体化によるインフレの加速を回避するために、現実的には、もっと引き上げる必要があるかもしれないとも述べています。

 

ING Bank のシニアエコノミストは、BSPが今後数回の政策決定会合で、インフレヘッジのために、金利の引き上げを続けることを期待していると語っています。

 

インフレ率は今年の残りの期間に上昇する可能性が高く、第4四半期には6.8%の高水準に加速し、年間平均は4.8%になると予想しています。

 

この見通しを考えると、25 bpの引き上げが予想されていますが、より強力な50bpsが必要になる可能性があるとも述べています。

※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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