ITに限らないガラパゴス化した日本の未来
■移民受け入れ問題は長期的に考える
IT人材にかぎらず、少子化が進む日本では、労働力不足も問題だ。現状のまま進めば、2030年には労働需要の1割近くの600万人以上が不足するとの予測もある。
現在でも、日本には技能実習生を含めて170万人ほど外国人材がいる。留学生のアルバイトを含めれば、実質的に200万人ほどになるだろう。しかし、人口1億2500万人を超える国で200万人程度では1・6%にすぎない。現状で500万人規模の人手不足なので、外国人材がもっと増えてもおかしくない。移民政策で成功したドイツは、外国人材が労働人口の10%以上を占めている。
ドイツの移民政策は50年以上の歴史があり、旧西ドイツが戦後復興で高度経済成長をする中、労働力不足を補うためにイタリア、スペイン、ギリシアなどの近隣国から移民を受け入れた。現在は、外国にルーツを持つ人たちの3分の1がドイツで生まれていて、第2世代、第3世代が活躍する時代になった。
労働力を輸入することができないのであれば、人件費が安い国にアウトソーシングすることで労働力不足を補うことはできる。特にデジタル関連の仕事は、ネットを通じて受発注できるので、国境は問題にならない。
たとえば、アメリカ企業はフィリピン、インド、ベラルーシ、ウクライナなどの人件費が安くてシステム開発能力が高いIT企業に外注することが多い。コンピュータ言語は世界共通だし、発注先は英語ができるため、仕事はスムーズに進む。日本企業も、フィリピンなどにシステム開発を発注すれば、安くていいものができるはずだ。そうなると、わざわざ日本に来て働いてもらう必要もない。
しかし、現状では難しい。間接業務のIT化でいえば、外注先は日本語と日本企業のしくみがわからないためだ。
私は1990年代にインド企業3社と合弁でソフトウェア会社を設立したことがある。そのときインドのITエンジニアたちは日本で働くことを嫌がっていた。
日本語を覚えるのが面倒だからだ。さらに、日本には、旧態依然とした独自のOSが普及していた。世界共通のOSを勉強したエンジニアは、他の国でいくらでも稼ぐことができ、英語圏であれば言葉の壁もない。よほど報酬が高額でなければ、日本の仕事はやりたがらない。語学の問題があって海外のIT企業に外注できないことも、日本企業のデジタル化やDXが遅れている原因の一つだ。
大前 研一
ビジネス・ブレークスルー大学学長
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