大前研一が語る「日本人はどれだけ働いても給料は上がらない」理由

日本では、どれだけ真面目に働いても給料が上がりません。その理由は単純で、企業の労働生産性が低いからです。ただし、製造業だけで比較すると、日本の生産性は低くありません。では、どこが足を引っ張っているのでしょうか。大前研一氏が著書『日本の論点 2022~23 なぜ、ニッポンでは真面目に働いても給料が上昇しないのか。』(プレジデント社)で解説します。

「デフレだから実質的にプラス」は間違い

■30年も給料が上がらないという異常事態

 

2020年1月からの新型コロナウイルス感染拡大による影響と政治の混乱は、日本経済に大きな打撃を与えている。経済を立て直し、長期低迷に歯止めをかけるには、その場しのぎの経済対策ではなく、抜本的な改革が必要だ。思い切った大改革に踏み出せないのであれば、誰が政権を担おうと明るい未来は開けない。

 

多くの日本人にとって、目下の大問題の一つは、自分自身の給料が上がらないということだ。今の状況では、どれだけ真面目に働いても、明日の暮らしが豊かになる期待を持つことができないだろう。雇用面で「安いニッポン」が続けば、優秀な人材は日本からどんどん逃げ出していくことになる。なぜなら日本人の働き方と賃金は、他の先進国の水準にほど遠い状況にあるからだ。

 

大卒の初任給は約20万円から24万円の間で、これは平成の初期とほぼ変わらない。30年間も給料が横ばいという状況は、世界に例がない異常事態である。過去30年間で平均賃金が2倍以上になった国は数多く存在しているからだ。

 

OECD(経済協力開発機構)の国際比較を見れば、このことがよくわかる。2020年における日本の平均賃金は年に約437万円である。これは35カ国中22位で、OECD平均の約558万円に対して120万円も少ない。

 

「給料が増えなくても、日本はデフレだから実質的にプラスだ」という見方もあるが、これは誤りだ。2002年から平均給与は0.4%しか増えていないのに対し、物価(消費者物価指数)は2.7%増えている。実質的にマイナスなのだ。

 

■一人当たりGDPでシンガポール、韓国に追い越されている

 

日本はGDPの規模でアメリカ、中国に次ぐ世界第3位とはいえ、先述したように一人当たりGDP(購買力平価)は1990年代から増えていない。

 

1990年代前半に一人当たりGDPが4万ドルを超えたときは「アジアで最初に日本が4万ドル経済になった」と称賛されたものだ。当時“アジアの雁行モデル”と呼ばれていたのは、日本が先頭を飛び、その後ろにシンガポール、韓国、香港、台湾、中国、東南アジア諸国が続いていたからだった。“先頭を飛ぶ日本”のイメージが強かったせいで、アジアのなかで日本が最も豊かな国であると錯覚している人はいまだに多い。

 

しかし、実際は今から10年以上前の2007年に為替ベースの一人当たりGDPでシンガポールに抜かれている。IMF(国際通貨基金)の推計では、2021年ではシンガポールが約6万4000ドル、日本が約4万3000ドルと1.5倍の差がついている。

 

2020年には韓国にも追い抜かれた。いじけた日本のマスコミはこのことを話題にもしない。日本は今やシンガポール、韓国の後塵を拝しているのだ。

 

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ビジネス・ブレークスルー大学学長

1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号取得、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号取得。日立製作所へ入社(原子力開発部技師)後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し日本支社長などを経て、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長を務める。近著に『日本の論点 2022~23』(プレジデント社)など著書多数

著者紹介

連載30年続いた「安い日本」から脱却する処方箋

本連載は、大前研一氏の著書『日本の論点 2022~23 なぜ、ニッポンでは真面目に働いても給料が上昇しないのか。』(プレジデント社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

日本の論点 2022~23

日本の論点 2022~23

大前 研一

プレジデント社

「なぜ日本では真面目に働いても給料が上昇しないのか」――。 約2年間にわたり猛威を振るい、各国の政治経済に深刻な影響を与えた新型コロナウイルスは、ワクチン接種が進んだ結果、いまだ予断を許さないとはいえ、世界は新…

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