(※写真はイメージです/PIXTA)

借金に対するマイナスイメージから、「今月は売上が多いから、この際、繰り上げ返済をして負債を減らしてしまおう」と考える方もいるでしょう。しかし、資金調達アドバイザーの田原広一氏は、余裕資金があっても繰り上げ返済はオススメしないと言います。賢く融資を受けるための秘訣を見ていきましょう。

「繰り上げ返済」はオススメしない

融資を受ける大前提となるのが、「貸したお金をきちんと返せるか」。つまり、次の融資につなげるためには、すでに融資を受けた分については、毎月の返済日に決まった金額を返済することが必須の条件となります。

 

しかし、だからといって期日より前倒して返済する、つまり繰り上げ返済をすることはオススメしません。

 

第一の理由は、経営を維持していくうえで、手元資金は充分に確保しておくべきだからです。

 

会社経営において借入金が多いことはマイナスの要素ではありません。

 

「今月は売上が多いから、この際、繰り上げ返済をして負債を減らしてしまおう」

 

そんな思いにかられることもあるかもしれませんが、手元資金の厚みを減らしてまで、繰り上げ返済をすることはプラスに働くどころか、逆にリスクを増やすことにもなりかねません。

 

経営においては、取引先が、突然業績が悪化して入金が遅れるなど、金策に追われる事態がいつ発生するやも分かりません。そんなときに手元に現金がなければ、いくら業績が好調でも思わぬ黒字倒産に追い込まれかねないのです。

 

目安は、最低でも月の売上の2ヵ月分程度を確保しておくこと。できれば月商の3ヵ月程度が通帳残金として残っているのが理想です。

それまで築いてきた金融機関とのパイプも失うリスク

繰り上げ返済をオススメしない第二の理由は、金融機関にとっても好ましくない事態だからです。

 

金融機関の収益源は、融資の実施および金融商品を販売することで得られる金利・手数料収入です。融資の際の毎回の返済日、返済額は、融資先である会社、個人事業主にとって適切であるとともに、銀行にとっても継続的かつ安定的に収益としての利息を受け取ることができるようプランニングされています。

 

そこで、繰り上げ返済で万が一、全額返済されてしまったら、計画は大幅に狂い、予定していた継続的な利息を受け取ることができなくなります。

 

担当者にとってもマイナスポイントとなり、あからさまに否認されることはなくても、「約束違反」と評価されることもあるのです。

 

第三に、借り手にとってのマイナスポイントとして「銀行とのパイプがなくなる」リスクが挙げられます。

 

もし借入金が0円になってしまい、そのほかの金融商品での付き合いがなければ、関係性はゼロに。せっかく創業1~2年かけて、築いてきた信頼関係がパーとなりかねません。

 

公庫は完済後、3年以内であれば借入履歴が残っており、次の融資の審査もスムーズに進みやすくなります。ここで早めに融資額を返してしまうと、後々、再び借りたいと思ったときに、新規扱いとなり、審査に時間がかかったり、前回ならばOKだった融資の審査に落ちてしまったりする可能性もあります。

 

「返すのは簡単ですが、改めて借りるのは大変」なのです。

 

金融機関とは長期スタンスで関係性を継続していくことこそが、万一の際のリスクヘッジにもつながるのです。

会社が倒産するのは「現金がない」とき

「繰り上げ返済をしたい」と考えてしまう方の深層心理として、「借入金はできるだけ少ないほうがいい」「借金は早く返済するのが正解」という、借金に対するマイナスイメージが少なからずあるのでしょう。

 

しかし、金融機関は融資をすることで利益を得て、会社は融資を通じてビジネスを拡大しています。要は借り手と貸し手は対等の立場にあり、意志の方向性も一致しています。借入をすることに引け目を感じる必要はいっさいないのです。

 

会社が倒産するのは「借金が多い」からではなく、「現金がない」ときです。

 

万一の事態に備え、もし繰り上げ返済をするとしても、全額返済はせず、関係性を保ちながら、手元に十分な現金を確保しておくようにしましょう。

 

 

田原 広一

株式会社SoLabo 代表取締役

 

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※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

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田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

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