(※写真はイメージです/PIXTA)

同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。睡眠習慣は、できる限り固定したほうがうまくいきます。睡眠研究の第一人者、スタンフォード大学医学部精神科教授・西野精治氏の最新刊『スタンフォードの眠れる教室』より、今回は「生活リズム」と「睡眠の質」について解説します。

「生活リズムの乱れ」が睡眠の質を低下させる

■コロナ禍、日本人の平均睡眠時間はちょっと伸びたが…

1万人を対象としたオンライン調査によると、2020年の日本人の平均睡眠時間は6時間27分。それが2022年には6時間48分と、21分長くなっていることがわかりました(ブレインスリープ調べ)。

 

違う調査による睡眠時間の比較はあまり意味がないのですが、OECD加盟国の平均睡眠時間は8時間25分ですから【図表】、相変わらず日本人は睡眠負債を抱えているものの、改善されたことは確かです。その背景には新型コロナの影響で、在宅勤務が増えたこともあるでしょう。通勤時間がなくなれば、その分睡眠に充てることも可能です。

 

OECD:2018年データからグラフ作成
【図表】OECD調査対象国の睡眠時間(分/1日) OECD:2018年データからグラフ作成

 

■生活リズムが崩れた原因は、リモートワークではなく…

同じ調査では、リモートワークをしている人たちの中で「生活全体が後ろにずれた夜型の人」が増えていることもわかりました。生活リズム・睡眠リズムが乱れたことで、睡眠の質も下がってしまったという結果も見られました。

 

この調査ではいくつかの指標をもとに、睡眠の質についてもアンケートを行っています。興味深いのは、最も睡眠の質が低下していると答えたのは、「週に1~2回在宅勤務を行っている人」だった点です。「ほぼ毎日在宅勤務を行っている人」と「在宅勤務を全くしたことがない人」では睡眠の質の低下はそれほどありませんでした。一方、「ある日は在宅、ある日は会社と毎日違う生活リズムの人」は、睡眠の質が悪くなったと答えています。

 

つまりリモートワークそのものが原因で生活リズムが乱れているのではなく、生活リズムが固定されなくなったことで、睡眠の質が落ちたということです。コロナ禍の巣ごもりで生活が乱れたという人も、同じ状況だと考えられます。

 

■体内リズムを崩さないために、就寝時間・起床時間を固定する

今後、ワクチン接種に加え、経口治療薬等の治療薬が普及するにつれて、新型コロナの流行は収まっていくか、あるいはインフルエンザ並みの恐怖になっていくでしょう。かといって、一度導入したリモートワークが完全になくなることもないはずです。そうなると「ある日は会社、ある日はリモート」という、一番生活リズムが乱れやすい働き方をする人が増えることになります。

 

また、仕事をリタイアした人、子育てが一段落した人も、「今日から自由だ!」となりますが、制約のない日々は、同じように生活リズムが乱れる危険をはらんでいます。このリズム変化のつらさはシフトワーカーの睡眠や健康障害にも関連があります。

 

自分で時間を決められるのであれば、一番望ましいのは就寝時間と起床時間をしっかり固定すること。忙しくて就寝時間がまちまちな人は、せめて起床時間だけでも固定してリズムを作るべきですが、自由が利くならどちらも固定するようにしましょう。

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スタンフォードの眠れる教室

スタンフォードの眠れる教室

西野 精治

幻冬舎

寝られなくても大丈夫! 科学的エビデンスで長年の悩みを解決。睡眠の誤った常識を覆す、眠りの研究最前線とは? 30万部を突破した前著『スタンフォード式 最高の睡眠』から5年。睡眠研究の権威・西野精治氏による待望の…

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