「夜のこってりラーメン」は睡眠の質を下げる…医師に聞く「眠りにいい食べ物、悪い食べ物」 (※写真はイメージです/PIXTA)

寝つきが悪い人は、体温を下げて脳をリラックスさせることが重要です。今回は「食事」に注目して、眠りを良くするポイントを見ていきましょう。睡眠研究の第一人者、スタンフォード大学医学部精神科教授・西野精治氏の最新刊『スタンフォードの眠れる教室』より、「眠りにいい食べ物」「睡眠の質を下げる夕食」を解説します。

Q1. 眠りにいい食べ物って何ですか?

⇒A. アミノ酸系のものを選びましょう。

入眠する3~4時間前より分泌が始まるホルモン「メラトニン」は、深部体温を下げて入眠しやすくします。そのため「眠りにはメラトニンがいい」といわれるのですが、免疫力を高めるといった作用もあります。

 

■メラトニンの“材料”になる食べ物は?

この前提で「眠りにいい食べ物」という質問にお答えするなら、成分がアミノ酸のもの。大豆製品、乳製品、穀類などに含まれるトリプトファンというアミノ酸が体内でセロトニンに変わり、メラトニンになることがわかっています。

 

ただし「食べればメラトニンがどんどん増える」という話ではありません。トリプトファンやセロトニンの長期の不足は困りますが、重要な条件は生活習慣でのメリハリで、夜間に光を浴びないことです。若い人なら普通、メラトニンは充分に分泌されているので、サプリなどは不要です。むしろ規則正しい生活をして朝にしっかりと光を浴び、「夜にちゃんと分泌されるように、メラトニン抑制スイッチを切る」という体内時計のコントロールに力を入れたほうが効果的でしょう。

 

■メラトニンサプリの服用は慎重に…メラトニンと「生殖」「がん」との関係

メラトニンは抗酸化作用があり、アンチエイジングに役立つといわれますが、加齢とともに分泌量が減っていきます。分泌量が減るから老化するのか、老化するから分泌量が減るのかはニワトリと卵の関係かもしれませんが、とにかく抗酸化作用は悪いものではありません。

 

「それなら、歳を取るほど大豆製品や乳製品をたくさん食べたほうがいいですか?」

 

そんな心配もあるかもしれませんが、食品からメラトニンを摂取しても量は限られており、効果がないとはいいませんが、劇的な変化は期待できません。

 

メラトニンには眠りや体内時計のリズムを調整する以外の働きもあります。実験に使用されるマウスでは「メラトニンが作れないマウス」が多いのです。メラトニンが作れないマウスでは、継代が早くなる(春期発動が早まり、子どもも早く産まれる)ことから、偶然そういうマウスが実験マウスとして選択されたのかもしれません。ただ睡眠や体のリズムに関係する物質はメラトニンだけではありませんので、そういったマウスでも睡眠や体のリズムに特に異常はありません。人でも小児にメラトニンを投与すると、初潮が遅くなった例の報告がありますので、生殖に関係していることは間違いありません。

 

メラトニンはまた、細胞増殖にも関係していることがわかっており、動物実験での投与によって「がん細胞の増加を抑制する」「がんになる」という両方の結果が出ています。

 

大豆製品や乳製品なら気にする必要はありませんが、「眠りのためにメラトニンのサプリメントをとろう」という人は、プラス面とマイナス面があることを理解しておくべきです。そういった意味では、中枢に作用するように開発された合成のメラトニン作動薬(ロゼレム)が安全かもしれませんが、特に子どもや妊娠中の女性の服用は、慎重にしたほうがいいでしょう。ただ、最近日本においても、小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善を目的としてメラトニン製剤の使用が承認されました。この場合は、メラトニンの分泌不足が神経発達症の発症や病状にも関わっている可能性がある例での補充療法です。

 

■「眠りにいいハーブ」は個人の好みに合わせて使用

食品に関連して、「このハーブは眠りにいい」といった昔からいわれていることに、エビデンスはあるのかと聞かれることもあります。すべての人で効果が得られるというものではありませんが、私は肯定的にとらえています。

 

「何百年も使われているなら、ある程度のポジティブな効果があるはず。全く効かなかったり、強い副作用があったりするなら、何百年もの間に自然淘汰されているはずだ」

 

自分の好みに合うのなら、カモミールティーでもホットミルクでも、取り入れるといいと思います。

 

■「夜のカフェイン」も無理にやめなくていい

また、「カフェインは覚醒系」というのは事実ですが、夕飯を食べたあとにコーヒーやお茶でホッと一息という習慣は、リラックスにつながります。「眠りに良くないだろう」というだけの理由でやめる必要はないでしょう。

 

本稿を含めて、本やwebにはあらゆる情報があふれています。それがすべての人にぴったり当てはまるということは決してありません。

 

私たちは眠りのために生きているのではなく、生きるために眠っているのです。

医師、医学博士
スタンフォード大学 医学部精神科 教授
スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNL)所長
日本睡眠学会専門医、米国睡眠学会誌、「SLEEP」編集委員
日本睡眠学会誌、「Biological Rhythm and Sleep」編集委員 

1955年、大阪府出身。大阪医科大学卒業。1987年、大阪医科大学大学院4年在学中、スタンフォード大学精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。2000年にはナルコレプシーの発生メカニズムを突き止めた。2005年にSCNLの所長に就任。2007年、日本人として初めてスタンフォード大学医学部教授となる。

睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。

33万部のベストセラーになった著者の初作、『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)は、10ヵ国語に訳され、世界中でも広く読まれている。2020年9月に文藝春秋より刊行された『スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術』。スタンフォード大学教授だからこそ発信できる希少情報が話題に。

コロナから3年、最新のデータを踏まえ、改めて睡眠を語る最新作『スタンフォードの眠れる教室』(幻冬舎)、2022年4月、好評発売中。

※西野教授の理論をもとに開発された枕も好評。「BRAIN SLEEP PILLOW」

著者紹介

連載スタンフォード大学医学部教授が教える「眠り」の正解

スタンフォードの眠れる教室

スタンフォードの眠れる教室

西野 精治

幻冬舎

寝られなくても大丈夫! 科学的エビデンスで長年の悩みを解決。睡眠の誤った常識を覆す、眠りの研究最前線とは? 30万部を突破した前著『スタンフォード式 最高の睡眠』から5年。睡眠研究の権威・西野精治氏による待望の…

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