(※写真はイメージです/PIXTA)

心不全は、一度発症したら完治することはありません。入退院を繰り返したり少しずつ症状が悪化したりして、やがて死を迎えることになります。しかし自分自身で病気の悪化をある程度コントロールすることができ、より良い状態を長く保つ可能性が残されています。再発や急性増悪を防ぐために大切な「服薬」について見ていきましょう。“心疾患・心臓リハビリ”の専門医・大堀克己医師が解説します。

「急性心不全か、慢性心不全か」で治療目的が変わる

心不全には急性心不全と慢性心不全があり、治療に対する考え方が基本的に異なります。急性心不全に対して行われる治療は息切れや動悸、胸の痛みなど、「今、起きている症状を改善する」ことを目的とします。

 

一方、慢性心不全に対して行われるのが予後の改善、つまり「心不全の再発を防ぎ、安定した状態を長く保つ」ための予防的治療です。

 

すなわち、急性心不全がターゲットとするのは「今」であり、慢性心不全がターゲットとするのは「将来」なのです。

とはいえ、心不全の治療は「服薬」が中心

ただし、いずれの場合も服薬が治療の中心であることは変わりません。心不全の治療薬には、「心臓を強くする薬」「心臓を休ませる薬」「症状を軽くする薬」などがあり、「急性心不全なのか、慢性心不全なのか」「症状の改善を目指すのか、再発を予防するのか」など、治療の目的に応じて複数の薬を組み合わせたり、使用期間を決めたりします。

 

代表的な薬は以下のとおりです。

 

●心臓を強くする薬(強心薬)

心臓の働きを強め、血液を送り出すポンプ機能を強化するのが主な目的です。特に、ジギタリス製剤は不整脈や頻脈性心房細動を合併した心不全に用いられます。

 

●心臓を休ませる薬

心臓の負担を軽減したり、保護したりするのが目的です。例えばACE阻害薬は、動脈を広げて心臓の負担を軽くしたり、血圧を降下させたり、心臓の肥大を抑えたりする効果があります。また、β遮断薬は血圧を下げ、脈を遅くすることで心臓を休ませる働きがあります。

 

●症状を軽くする薬

息切れやむくみなどの症状を改善することが主な目的です。例えば利尿薬は、体内に溜まった余分な水分を尿として排出することで、心臓に掛かる負担を減らします。また、肺や下肢に溜まった水分を排出することで、呼吸困難やむくみなどの症状を改善します。

自己判断で薬をやめたり、増やしたりするのは禁物

急性心不全、慢性心不全とも、症状や目的に合わせ、これらの薬を組み合わせて使います。特に、慢性心不全は長期にわたって薬との付き合いが必要になるため、治療途中で、「症状が軽くなったから、もう薬をやめてもいいだろう」と、自己判断で服薬をやめてしまう人も少なくありません。

 

しかし、たいていの薬は飲んですぐに効くのではなく飲んだあとに体内で代謝され、薬の成分濃度が体内で一定になることで、ようやく効果を発揮するものです。そのため「体調が良くなったから服薬をやめる」、あるいは「具合が悪くなったから薬の量を増やす」と勝手に判断しては、期待した効果が得られないばかりか、副作用が起きてしまうこともあります。

 

上手に薬と付き合っていくためには、何よりも医師の指示を守ることが必要です。そのため薬について疑問があれば遠慮せず医師や薬剤師に質問する、副作用や服薬のリスクが気になるときは率直に尋ねるなど、普段から信頼関係を築いておくことが大切だといえます。

有効な治療法のなかった「ヘフペフ」にもようやく光が

近年、高齢者の増加とともに「収縮機能が保たれた心不全=ヘフペフ(HFpEF)」が急激に増えています。

 

現在、心不全患者の半数以上がヘフペフだといわれています。そしてこの数は、今後高齢化が進むにつれ、ますます増加するだろうといわれています。

 

ヘフペフに対する治療は利尿薬を使い、体内の余分な水分を尿として排出することで、むくみや息切れなどの症状を改善するのが主体です。もし高血圧や糖尿病を合併している場合は、それらの治療を並行して行い、増悪を防ぐという対策も推奨されています。2021年8月に、初めてSGLT2阻害薬がヘフペフに有効であることが立証され、今後が期待されます。

 

SGLT2阻害薬がヘフペフに対してどのような効果を発揮するのか、その作用機序を含め、今後の研究が待たれています。

 

 

大堀 克己

社会医療法人北海道循環器病院 理事長

 

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    本記事は、大堀克己著『心不全と診断されたら最初に読む本』(幻冬舎MC)を抜粋・再編集したものです。

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