社外承継でも早く取りかかりたい
親族内や社内に的確な人材を見つけることができず、それに次ぐ選択肢として社外承継に取り組む経営者は少なくないと思います。それゆえ取り掛かるのが遅れ、短期間で相手を探すあまり資質や人間性を精査することができず、承継後にミスマッチが発覚してしまったという事例は散見します。
こういった事態を避けるには、他の承継方法と同じく、ある程度時間をかけた選定プロセスが求められ、人材の見極めは非常に重要です。
また、実際に会社経営を経験し、業績を拡大したことのある人なら、同じく社長の立場で承継しても構わないでしょうが、そうでないのならいきなり経営を任せるのは、あまりにも性急かもしれません。まずは社員として入社してもらい、役員などに据えて経験を積んでもらうなかで力量を確かめるといった手段を選ぶこともできます。
現社長から次期社長への移行期間を設けることで社風を知ることができ、社内外の関係者と交流を図る時間もあるので、相互理解にもつながるでしょう。関係者からしても、早めに公表してもらうと心情的に安心ですし、納得しやすくなります。
■株式取得などの資金不足の課題も同じ
現経営者の親族以外から後継者を選ぶという点で、社外承継の手順は社内承継と、大きく変わりません。基本的には株式や事業用資産の譲渡に伴う、経営権や資産の移転というのが基本的な流れです。
なかには、「この事業だけ引き継ぎたい」といった部分的な事業譲渡もありますが、この場合は現経営者と後継者の間による法人取引になり、現経営者個人にキャッシュは入らないので注意が必要です。
また、後継者の手元に潤沢なキャッシュがあれば構いませんが、そうでないのなら株式や事業用資産の取得資金が不足し、承継に至らない可能性もあります。借入金に対する個人保証の問題もハードルとなり立ちはだかるでしょう。
こういった点も踏まえて協議を行い合意に至る必要があるので、限られた時間で相手が見つからないことも考えられます。
「経営のプロなら簡単に見つかる」と悠長に構えることなく、親族内・社内に後継者が見つからないのなら、1日でも早く手を打つことです。
瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長