(写真はイメージです/PIXTA)

相続税の場合、計算誤りなどの他、遺留分侵害額請求や未分割であった遺産の分割など、相続特有の事情によって税金を納めすぎていた、というケースがあります。過払いの相続税を取り戻す「相続税の更生の請求」について、相続に詳しい、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

相続税の更正の請求はいつまでにすべきか?

更正の請求には期限があります。期限を過ぎてしまえば受けられるはずであった還付を受けることができなくなってしまうため、注意しましょう。

 

更正の請求の期限は、次のとおりです。

 

更正の請求の期限は申告期限から5年以内(原則)

あらゆる国税について定めている国税通則法の規定によれば、更正の請求をすることができるのは原則として法定申告期限から5年以内とされています。

 

ただし、相続税特有の事情などで更正の請求をする場合には次の特例があります。相続税についての更正の請求で5年以内という期限が適用されるのは、次で記載するケース以外の場合のみとなりますので、注意しましょう。

 

相続税の更正の請求には特則がある

相続に特有の事情によって生じる更正の請求については、相続税法により原則とは異なる期限が設けられています。相続特有の事情とは、代表的なものとして次のものが挙げられます。

 

  • 認知などで相続人に異動があった場合
  • 遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定した場合
  • 未分割だった遺産が分割された場合
  • 遺贈に係る遺言書が発見された場合

 

これら相続特有の事情による場合の更正の請求は、これらの事由が生じたことを知った日の翌日から4ヵ月以内とされています。つまり、たとえ相続税の申告期限から2年経過後に遺留分侵害額請求がなされた場合であっても、更正の請求ができるのはその時点から4ヵ月以内のみということです。申告期限から5年以内であっても、事由の発生を知ってから4ヵ月が経つともはや更正の請求ができなくなるので注意しましょう。

 

一方で、相続税の申告期限から5年が経った後で遺留分侵害額請求がなされても、そこから4ヵ月以内であれば更正の請求をすることが可能です。

相続税の更正の請求に必要な書類

相続税の更正の請求をするには、次のような書類が必要です。これらを自分で準備することは容易ではありませんので、相続税の申告を依頼した税理士に相談することをおすすめします。

 

相続税の更正の請求書

相続税の更正の請求書は、更正の請求のメインとなる書類です。更正の請求書自体は更正の請求をする理由などを記載する欄などがある非常にシンプルな書式ですが、これに附属する書類として、課税価格や税額の計算を示すための付表などの添付が必要となります。

 

更正の請求の理由の基礎となる事実を証明する書類

更正の請求には、更正の請求の基礎となる事実を証明する書類を添付しなければなりません。具体的には、遺産分割協議の結果を記した遺産分割協議書や遺言書、調停調書、判決書などです。添付すべき書類は更正の請求が必要となった理由によって異なりますので、状況に応じて管轄の税務署や税理士などに確認すると良いでしょう。

更正の請求が認められなかった場合の対処法

税務署に対して更正の請求をしたにも関わらず、税金の還付をしないと判断されて「更正すべき理由がない旨の通知書」が送付されてしまうことがあります。この場合の主な対応方法は、次のとおりです。

 

ただし、これらの対応を自分でおこなうことは容易ではありませんので、税務に詳しい弁護士へあらかじめ相談されることをおすすめします。

 

審査請求や再調査請求をおこなう

税務署の判断に納得がいかない場合には、国税不服申立制度で定められた再調査の請求や審査請求を検討します。

 

再調査の請求とは、更正をしないと判断した税務署長に対して再度の調査を求める請求です。一方、審査請求とは、国税不服審判所長に対して審査を求める請求です。

 

いずれも、裁判所など外部の機関が審査をするものではなく、組織内部での調査となる点で訴訟と異なります。

 

これらはいずれも、原則として処分の通知を受けた日の翌日から3ヵ月以内に行わなければなりません(再調査の請求についての決定を経た場合に審査請求をする場合は、正当な理由がある場合を除き、再調査決定書謄本の送達があった日の翌日から起算して1ヵ月以内に行わなければなりません)。

 

訴訟を提起する

国税不服申立制度を利用してもなお相続税の更正の請求が認められず納得がいかない場合には、税務訴訟の提起を検討することとなります。

 

訴訟の提起は、原則として裁決の通知を受けた日の翌日から6ヵ月以内に行わなければなりません。訴訟を提起すると、更正の請求を税務署が認めないことが妥当かどうか、裁判所が判断を下します。

 

税務訴訟には非常に専門的な知識や経験が必要となりますので、弁護士のなかでも税務訴訟に詳しい専門家へ依頼するようにしましょう。

 

◆まとめ

相続に特有な事情による更正の請求の期限は、事由が生じたことを知ってから4ヵ月以内と非常に短くなっています。

 

相続税の更正の請求での還付金額は非常に高額となる場合も少なくなく、万が一期限に遅れてしまうと還付が受けられなくなってしまうので注意しましょう。

 

あらかじめ専門家と連携を取っておくことで、スムーズに手続きをすすめることが可能となります。

 

 

Authense法律事務所

堅田 勇気

 

 

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