(写真はイメージです/PIXTA)

発注者である親事業者と下請事業者との取引を公正なものとするための法律である「下請法」。違反した場合のペナルティ含め、解説していきます。

下請法とは

下請法は、その正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

 

下請法は、下請代金の支払遅延などを防止することにより、親事業者と下請事業者との取引を公正とすることや、下請事業者の利益を保護することなどを目的とする法律です。

 

通常、下請事業者に仕事を発注する事業者(「親事業者」といいます)は、下請事業者よりも取引において強い力を持っています。そのため、親事業者の一方的な都合で支払いを遅延されたり、不当な値下げを要請されたりしても、下請事業者としてはあらがえない場合が少なくないでしょう。

 

親事業者の要求を飲まないことで、次回以降仕事を回してもらえなくなったり、進行した仕事を途中で打ち切られてしまったりすれば、下請事業者は、大きな損害を被りかねないためです。

 

このような事態を避けるために制定されたのが、下請法です。

 

親事業者は思わぬ違反をしてしまうことのないように、下請事業者は親事業者から不当な取り扱いを受けないように、下請法をよく理解しておくべきといえます。

下請法の対象となる取引とは

元請けと下請けの関係だからといって、必ずしも下請法が適用されるわけではありません。下請法が適用されるのは、次の類型(図表)のいずれかに該当する場合のみです。※1※2

 

[図表]

 

それぞれの委託業務の内容は、次のとおりです。

 

◆製造委託

製造委託とは、物品の販売や製造を請け負っている事業者が、規格や形状、デザインなどを指定して他の事業者に物品の製造や加工などを委託することをいいます。たとえば、次のような場合がこれに該当します。

 

  • 自動車メーカーが、自動車の部品の製造を、部品メーカーに委託する場合
  • 精密機器メーカーが、受注生産する精密機械に用いる部品の製造を、部品メーカーに委託する場合
  • 家電メーカーが、販売した製品の修理用部品の製造を、部品メーカーに委託する場合

 

なお、ここでいう「物品」には、家屋などの建築物は含まれません。

 

◆修理委託

修繕委託とは、物品の修理を請け負っている事業者がその修理を他の事業者に委託する場合や、自社で使用する物品を自社で修理している場合にその修理の一部を他の事業者に委託することなどをいいます。

 

たとえば、自動車ディーラーが、請け負った自動車の修理作業を修理業者に委託する場合や、整備工場で使用する機械や工具等の修理を修理業者に委託する場合などがこれに該当します。

 

◆情報成果物作成委託

情報成果物作成委託とは、ソフトウェアや映像コンテンツ、各種デザインなどの情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することをいいます。情報成果物の代表的な例は、次のとおりです。

 

  • プログラム:TVゲームソフト、会計ソフトなど
  • 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの:アニメなど
  • 文字、図形、記号などの結合により構成されるもの:設計図、ポスターのデザインなど

 

◆役務提供委託

役務提供委託とは、運送やビルメンテナンスなどのサービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託することをいいます。たとえば、自動車メーカーが、販売した自動車の保証期間内のメンテナンス作業を自動車整備会社に委託する場合などがこれに該当します。

 

ただし、建設業を営む事業者が請け負う建設工事は、ここでいう役務には含まれませんが(建設工事については、建設業法に、下請業者の保護規定がおかれており、下請法では除外されています。)、建設業者に下請法が適用される場合もありますので、注意が必要です。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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