(写真はイメージです/PIXTA)

早期退職制度とは、通常の退職よりも上乗せした退職金を支給することを条件として退職者を募集することにより、従業員の早期退職を促す制度のことです。本記事では、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が、早期退職制度の導入による企業と従業員それぞれのメリット・デメリット、早期退職制度を新規で導入する際の注意点などについて解説します。

早期退職制度とは?

早期退職制度とは、退職金の割り増しなどを見返りに、企業が従業員の早期退職することを促す制度です。はじめに、早期退職制度の概要について解説しましょう。

 

制度の概要

早期退職制度とは、就業規則や退職金規程に定めを置くことにより、早期の退職者に退職金を割り増しして支払う制度です。

 

一定以上の年齢の人や勤続年数の人のみを対象とするなど、対象者を絞る形で規程をつくるケースが多く、企業の若返りを目的として導入されることや、業績が低迷したときに人件費を削減することを目的として行われることが多いといえます。

 

希望退職制度との違い

従業員に早期の退職を促す制度として、他に「希望退職制度」も存在し、両者をまとめて「早期退職制度」と呼ぶこともあります。

 

あえて早期退職制度と希望退職制度が別で語られる場合には、早期退職制度はその企業の恒常的な仕組みとして導入される制度を指し、希望退職制度は一時的な人員整理などの目的で導入される制度を指すことが一般的です。

早期退職制度を導入する会社のメリット・デメリット

早期退職制度を導入した場合、会社と従業員にはそれぞれ異なるメリットとデメリットが存在します。それぞれ、確認していきましょう。

 

会社のメリット

早期退職制度を導入する会社のメリットは、主に次の2点です。
 

■人件費が削減できる

早期退職制度により、早期に退職する従業員が増えることで、退職した従業員の分の人件費を長期にわたって削減することが可能です。

 

早期退職制度を導入する際には「〇歳以上」など一定の下限年齢の制限や「勤続〇年以上」など下限の勤続年数の制限を設けることが一般的であり、これらの人は人件費が比較的高いことも多いため、大きな削減効果が期待できます。

 

また、人員削減のために利用される整理解雇は、認められるための要件がかなり厳しく、他方で、労使紛争が発生しやすい制度ですが、早期退職制度や希望退職制度は、あくまで会社と従業員の合意による退職を目指すもので、労使紛争回避にもつながり、しかも、希望退職の募集は、整理解雇が認められるための要件である「回避努力措置」の1つと考えられています。

 

■会社の若返りを図りやすくなる

早期退職制度で下限年齢の制限を設けることにより、一定以上の年齢である従業員の退職が促されることとなります。これにより、会社の若返り効果が期待できます。

 

会社のデメリット

早期退職制度を導入することによる会社のデメリットとしては、主に次の2点が挙げられます。

 

■退職金支払いで一時的に支出が増える

早期退職制度を導入することにより、例年よりも多い人数の退職者が発生すれば、退職金の支払いで一時的に支出が増える可能性があります。

 

退職金は現預金の支出を伴うものであるため、現預金の残高に余裕がない時期に導入をしてしまうと、資金繰りに支障が生じる懸念があります。

 

■有能な人材が退職してしまうおそれがある

早期退職制度の導入により、会社としては退職して欲しくないような有能な人材が早期退職に応募してしまう可能性があります。

 

退職には会社の承諾を必要とすることが一般的ですが、一度退職の意思を固められてしまえば、翻意させることは容易ではないでしょう。

 

次ページ早期退職制度を導入する従業員のメリット・デメリット

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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