下請法で定められた義務や禁止事項
下請法には、親事業者が遵守すべき4つの義務と、禁止されている11の事項が定められています。※1それぞれ紹介していきましょう。
下請法による親事業者の義務4項目
下請法で親事業者に課されている義務は、次のとおりです。※3
- 書面の交付義務:委託業務の内容、下請代金の額や支払期日など法定された内容を記した書面を、発注に際して下請事業者に交付する義務
- 支払期日を定める義務:下請代金の支払期日を、物品などの受領日や下請事業者による役務提供日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定める義務
- 書類の作成・保存義務:委託業務の内容、下請代金の額や支払期日など法定された事項を記載した書類を作成し、2年間保存する義務
- 遅延利息の支払義務:下請代金を支払期日までに支払わなかったときは、物品などの受領日や下請事業者による役務提供日から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について、年率14.6%の遅延利息を下請事業者に対して支払う義務
下請法による禁止されている11項目
下請法で禁止されている事項は、次のとおりです。※4親事業者がこれらの行為をおこなってしまえば、下請法違反となります。
- 受領拒否:下請事業者に責任がないにもかかわらず、注文した物品等の受領を拒むこと
- 下請代金の支払遅延:支払期日までに下請代金を全額支払わないこと
- 下請代金の減額:下請事業者に責任がないにもかかわらず、あらかじめ定めた下請代金を減額すること
- 返品:納入された物品に欠陥があるなど明らかに下請事業者に責任がある場合でないにもかかわらず、納入された物品等を返品すること
- 買いたたき:通常より著しく低い額の対価を不当に定めること
- 購入・利用強制:正当な理由なく親事業者の指定する製品や原材料などを強制的に下請事業者に購入させたり、サービスを強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせたりすること
- 報復措置:親事業者の下請法違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に、下請事業者に対して取引数量を減じたり取引を停止したりその他不利益な取扱いをすること
- 有償支給原材料等の対価の早期決済:親事業者が下請事業者の給付に必要な部品などを有償で支給している場合に、下請事業者に責任がないのにこの部品などの対価を下請代金の支払期日より早い時期に支払わせたり下請代金から控除(相殺)したりすること
- 割引困難な手形の交付:支払期日までに一般の金融機関で割り引くことが困難な手形で下請代金を支払うこと
- 不当な経済上の利益の提供要請:下請事業者に対して、自己のために金銭などの経済上の利益を提供させることにより下請事業者の利益を不当に害すること
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し:下請事業者に責任がないのに、発注の取消や発注内容の変更をしたり受領後にやり直しをさせたりすることで下請事業者の利益を不当に害すること
下請法に違反した場合の罰則やペナルティ
下請法には、上記のとおり、さまざまな義務や禁止事項が定められています。※2万が一これらに違反すれば次のような罰則やペナルティが科される可能性があるため、違反することのないよう注意しましょう。
公正取引委員会による勧告や指導がされる
親事業者が下請法に違反をすると、公正取引委員会から勧告や指導がなされます。違反の内容によっては、不当に減額をした請負代金や支払を遅延した代金にかかる遅延利息などを下請事業者へ支払うよう勧告がなされる場合もあります。
罰金が課される
親事業者が必要な書類を交付していなかった場合や、公正取引委員会の必要な検査を拒んだ場合などには、50万円以下の罰金が科される場合があります。この罰金は、当該違反行為をした人物のみならず、その人物が属する会社にも科されます。
公正取引委員会のウェブサイトで公表される
下請法に違反をした親事業者は、公正取引委員会のウェブサイト上で公表されます。公表がされると企業のイメージが毀損するおそれがあり、業績へ影響が及ぶ可能性が否定できません。
◆まとめ
下請法に違反をすれば、処分事例の公表などのペナルティが課されます。
企業によっては下請法の規制内容を知らないままに違反してしまっているケースもあるかと思いますので、ぜひ下請法をご確認の上、違反があれば早期に是正しましょう。
西尾 公伸
Authense法律事務所弁護士
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