「工場が…工場が燃えている!」九州の中小寝具メーカー、オイルショック時に見舞われた〈危機的状況〉

「工場が…工場が燃えている!」九州の中小寝具メーカー、オイルショック時に見舞われた〈危機的状況〉
(※写真はイメージです/PIXTA)

九州の寝具メーカーとしてビジネスを展開する企業のルーツは、戦後の復興期に設立された特殊紡績会社でした。特殊紡績の取り扱いを経て綿と脱脂綿製造を開始して以降、高度経済成長期の波に乗って順調に業績を伸ばしていましたが、そこで大変な災難が降りかかります。年末の寒い日、約60メートルのラインが並ぶ主力工場が火災に見舞われ、焼け落ちてしまったのです。原材料はもちろん、最新鋭の機械がすべて使用不可能となりました。

好調だった会社を襲った工場火災とオイル・ショック

当時社長をしていた父をここまで追い込んだ要因の一つは、工場火災を発端とする倒産の危機でした。

 

1974年、年の瀬も押し迫った12月29日のことです。当時は業績が好調で、次々に機械を増設していたところでした。加えてこれまでの設備も活かしながら有機的にライン生産ができるように、工場のレイアウトに工夫を加えるなどしてさらなる増産を目指していました。

 

その日も朝から機械を動かしており、夜勤の社員2人が不織布のラインで操業していました。すると午後7時半頃、けたたましいベルの音が鳴り響きました。それは火災の発生を知らせる非常ベルでした。あわてて状況を確認しようと工場へ向かったところ、第三工場から真っ赤な炎が出ています。

 

この第三工場は、約60メートルのラインが並ぶ主力工場でした。夜勤の2人の従業員と父、兄と私とで消火器で消そうとしましたが、焼け石に水といったレベルでとてもすぐに消せるような炎ではありませんでした。

 

その頃当社が作っていた製品は不織布や紙おむつなど、燃えやすい性質のものばかりです。火は勢いを増し、機械の周りに積まれていた製品へと瞬く間に燃え移っていきました。しかも時期は12月です。冬の乾燥した空気にあおられるようにして、炎は恐ろしい勢いで工場全体を包んでいきました。身の危険を感じた私たちは消火作業を諦め、安全なところに避難して、消防車の到着を今か今かと祈るような気持ちで待ちました。

 

消防車が到着しても、工場の中にホースを差し込むために工場のドアをドリルでこじ開けようとして時間がかかったり防火用水を探して右往左往したりと、消火活動はなかなか思うようには進みませんでした。そうこうしているうちに、私たちの目の前で工場は焼け落ちてしまいました。

 

その被害は甚大でした。原材料はもちろんのこと、この火事の前年に隔月で導入してきた最新鋭の機械がすべて焼けて使えなくなってしまったのです。

 

同じレベルの製品を作るには、同じものをもう一度そろえなければなりません。父は一刻も早く機械をそろえようと大阪の業者を回りました。もともと高額な機械ではありましたが、どれも二倍近い価格になっていました。というのもタイミングの悪いことに、この一年のうちに世の中はオイル・ショックに見舞われていたからです。一般的な商品の価格は戻っていたものの、機械の値段は高騰したままでした。

 

それでも、機械を買わなければ事業を再開することはできません。背に腹はかえられぬということで父は火災前と同じくらいの台数の機械を注文することにし、工場の復旧を目指しました。

 

 

龍宮株式会社 代表取締役社長
梯 恒三

 

 

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一品勝負 地方弱小メーカーのものづくり戦略

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梯 恒三

幻冬舎メディアコンサルティング

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