Uターン転職の面接で志望動機を聞かれて、「何でもやります」「どんな仕事でもできます」という答えは最悪です。面接時には自分に何ができて何ができないか、等身大の自分というのを、正確に把握しておく必要があります。キャリアコンサルタントの江口勝彦氏が解説します。

自分の強みと企業が求めることがリンクしているか

■「なぜ、うちの会社なのか」の問いに的確に答える

 

自分の強みやキャリアが把握できていると、面接でのなぜ、うちの会社を志望するのかという問いに的確に答えることができます。

 

この問いには「ほかにも会社はあるのに、なぜこの会社なのか」「この会社とあなたがマッチするとなぜ言えるのか、その根拠を示してほしい」という真意が込められています。

 

この真意を汲んでいれば、「家から通勤範囲内だからです」「評判がいいと聞いたからです」といった答えは、間違っても出てこないはずです。

 

その会社の理念や業務内容、市場での優位性などを企業研究したうえで、自分の力を発揮するのに最適の場所であると結論付けたのでしょうから、そこを語ればいいのです。

 

一例を挙げれば、海外展開をしようとしている会社に対して、「自分の語学力や海外駐在経験を活かして、事業の橋渡しができると考えた。海外と日本のビジネスルールの違いや、グローバルでの仕事のスピード感やスケール感を知っている自分なら、きっと役に立てるはずだ」といった感じです。

 

この回答なら、自分の強みと企業の求めることがきちんとリンクしています。

 

反対に、企業側が答えてほしそうな答えを創作して話すと、キャリアのつながりが見えないので「うちの会社のことを理解していない」「採用されればいいと思ってポリシーがない」と思われてしまいます。

 

■一人で考えるのが難しければエージェントの助けを借りる

 

自己理解するのに一人だと考えが深まらない、客観的な視点が足りないという場合は、転職エージェントの力を借りるとよいと思います。

 

個別のコーチングスタイルでカウンセリングをしてくれる転職エージェントは、自己理解をする際の頼りになります。一般的にイメージするエージェントは、希望の職種、ポジション、年収などの条件を聞き取り、いちばん条件に近いところを選び出して勧めるという役割です。これはスキームによって転職を叶えていくスタイルといえます。

 

私が挙げる「コーチングをしてくれる転職エージェント」とは、あなたがどう生きたいかを掘り下げて考えるお手伝いをし、その実現を一緒に具体化していってくれる存在です。一言で言えば、キャリアをデザインするサポート役です。そういうキャリアデザインのできるエージェントは、単に職を見つけるためのアドバイスでなく、もっと幅広いヒアリングやアドバイスをします。

 

先日もクライアントから「妻が子どもの習い事にこだわりをもっていて、Uターン先でも同じレベルのレッスンが受けられるのかを心配しているのですが、どうですか? ありますか?」といった質問を受けました。

 

そんなものは転職エージェントの答える質問ではないと突っぱねるエージェントもいるかもしれませんが、そのクライアントがUターン転職を決断するに当たり妻や子どもの生活面の充実を重視していることは明らかだったため、私は必要な情報をリサーチし、クライアントへ提供しました。

 

面談ではクライアントとの対話を通して、人生観や価値観のかなり踏み込んだ部分まで聞いていきます。その掘り下げの過程では当然、いろいろな疑問や不安が出てきます。特に子どもの教育環境や住環境、通勤実態などについての不安が多いです。そういったことも含めて一緒に解決していくことで、その人が本当に求めている転職のかたちというのが輪郭を表してきます。

 

江口 勝彦
株式会社エンリージョン 代表取締役
キャリアコンサルタント

 

 

本連載は江口勝彦氏の著書『幸せのUターン転職』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再編集したものです。

幸せのUターン転職

幸せのUターン転職

江口 勝彦

幻冬舎メディアコンサルティング

30代になると結婚や子どもの誕生、マイホームの購入、親の介護などさまざまなライフイベントを迎えます。 そのタイミングで都会からのUターン転職を考える人もいますが、年収やキャリア形成の不安から「自分が働ける場所はな…

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