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時代に逆行する羽田空港、補助金も出ない…
日本国内で陸上飛行ルート運行を予定している空港を探してみたところ、福岡空港が2025年春の滑走路増設に併せて着陸経路の変更を検討しているようです。
現在は博多湾側から福岡県春日市上空を急旋回して着陸する飛行ルートですが、将来的にはより内陸部の久留米市、小郡市、筑紫野市、太宰府市などの上空を経由して着陸する新飛行ルートを計画しています。現在すでに飛行ルート下となっている春日市などの住民に対しては防音工事や移転補償などの費用助成が行われており、新飛行ルート下の住民も同様の手厚い補助が受けられることになるでしょう。
このように、陸上を飛ぶ新飛行ルートの運用を開始すればルート下地域の環境悪化問題が取り沙汰されることになり、政府も何らかの対策を取らざるを得なくなります。
過去には大阪国際空港(伊丹空港)周辺住民と対立した騒音公害訴訟の経験もあり、この教訓を踏まえ、平成以降に開港した関西国際空港や神戸空港、そして中部国際空港(セントレア)は住宅のない海上埋立地に建設されています。
羽田空港や福岡空港は時代に逆行しているように受け取れます。福岡の場合はそれを補うために助成制度を設けていますが、羽田はどうでしょう?
一部報道によると、政府は「(羽田の場合)陸上飛行時間を1日3時間程度に限定すれば騒音問題は免責」と考えているようです。現状、たとえ80デシベル(走行中の電車内、救急車のサイレン、パチンコ店内相当の騒音)を超えても住宅への防音費用補助は受けられないということです。
新飛行ルートの影響は、現状では受けていない模様
新飛行ルート下にあるのは白金高輪だけではありません。「目黒」駅上空(品川区・高度約600m)や、「大井町」駅上空(品川区・高度約450m)なども該当しています。
目黒駅付近は高層ビルが多いせいか、白金高輪駅上空よりも機体が大きく見えます。駅前の高層ビル群を縫って飛行する旅客機の姿は、アメリカ・ニューヨークで起きた航空機ハイジャックテロを彷彿とさせられ、悪寒が走ります。
大井町駅上空ではより機体が大きく見えるようになり、エンジンの爆音だけでなく、着陸に備え操縦士が尾翼を操作する「カタ、カタ…」という音まで聞こえてきます。
不動産業者の多くは「新飛行ルート下地域の不動産価値は近い将来下落するだろう」と推測しています。騒音や落下物による人的被害や建物破損も心配ですが、これまで高水準をキープしてきた不動産評価が下落してしまうことは大きな痛手です。
ここで「白金高輪」駅前の路線価推移を見てみましょう。新飛行ルート運行前年にあたる2019年(平成31年・令和元年)の路線価は236万円/m2、そして最新年(令和3年)の路線価は253万円/m2で約107%の上昇となっています。
比較のため「新橋」駅前の路線価推移も見てみると、2019年は1,163万円/m2、最新年は1,212万円/m2で、約104%の上昇に留まっています。単価差はあるものの、新橋より白金高輪の方が価格上昇率が大きく、新飛行ルートの影響は受けていないように思えます。新飛行ルートが開始されてまだ2年程度ですから、今後変動する可能性は残っていますが。
白金高輪ばかりでなく、目黒や大井町までも不動産価値が下がるとなれば、関連エリアに賃貸物件を所有する不動産投資家にとって大変深刻な問題になります。とはいえ現段階でその気配は微塵もなく、むしろコロナ禍による景気低迷の巻き返しで不動産市場は沸き返っています。
新飛行ルート下の不動産評価が下がるのが先か、はたまた新飛行ルート自体が廃止されるのが先か、当面静観していられそうです。