▲トップへ戻る
任意後見制度の執行を監督する「任意後見監督人」

今回は、任意後見制度の適切な執行に監督する「任意後見監督人」とは何かを見ていきます。 ※本連載は、日本公証人連合会理事・栗坂滿氏の著書、『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』(エピック)の中から一部を抜粋し、成年後見制度等にまつわるトラブルとその予防・解決法を紹介します。

任意後見契約に付け足したい「見守り条項」

前回の続きです。

 

≪トラブルを避けるためのワクチン接種≫

任意後見契約に関する法律(以下、本連載では「法律」と略します)4条Ⅰ項では、任意後見監督人の選任請求権者として、本人、配偶者、四親等内の親族以外に任意後見受任者も挙げられています。

 

しかし、これはあくまでも請求できる権利であって、請求する義務まで課しているものではありません。そこで、契約上で、任意後見受任者に任意後見監督人の選任請求義務を課すこともよく行なわれています。任意後見契約と同時にそれに先行する財産管理契約を結ぶ場合(移行型任意後見契約)の受任者は、委任者の判断能力が不十分となったら契約の趣旨からも委任された事務を行うことができなくなりますので、当然委任者の生活状況や判断能力等の低下等の健康状態を見守る必要があります。

 

したがって契約の中に受任者に委任者を見守る義務を課す「見守り条項」が特に設けられていなかったとしても受任者には委任者を見守る義務が生じますが、受任者にその義務を明確に認識させ遵守させるために、「見守り条項」及び、「任意後見監督人の選任請求義務条項」を付けておくことが強く望まれます。

 

「見守り条項」の具体的内容ですが、普通は、本件に即して表すと、Cは、Aの身上に配慮するものとし、適宜Aと面談し、ヘルパーその他の日常生活援助者からAの生活状況につき報告を求め、主治医その他の医療関係者からAの心身の状態につき説明を受けることなどにより、Aの生活状況及び健康状態の把握に努めなければならない。などと規定し、また具体的な面談等の頻度につき「月に◯度の訪問面談する」とか、「週に◯度電話連絡等により確認する」とか明示することもあります。

 

本件の場合は、隣人のDさんの協力も得られるなら、DさんにもA子さんのことを気遣ってもらい、Dさんと長女Cさんが容易に連絡を取り合うような環境整備を行った上で、Cさんが近所のDさんにA子さんの状況を定期的に尋ね、報告や説明を受けることを義務化したり、少なくとも風通しのいい連絡体制を作ることができたらよかったと思います。

 

それでも、受任者がその義務を果たすのを怠ったときの場合に備えて、任意後見受任者以外の第三者との間で委任者の日常生活の「見守り契約」を締結することも検討する余地があります。

 

そして、この第三者が、面談等で委任者の判断能力が低下して後見開始の期が熟していると判断した場合は、その者が任意後見監督人選任請求権者(法律4条Ⅰ項)であるなら、速やかにその請求をなす義務まで課すこともできるでしょうし、任意後見監督人選任請求権者でない場合なら、受任者等に任意後見監督人選任請求を促す義務等を課すことだって考えられます。

 

心配であるなら、このように万が一のことを考え、適切な時期に適切に任意後見が開始できるような体制作り、環境整備を行って備えておくべきでしょう。

適正な事務処理がなされているかどうチェックするか?

*任意後見監督人ってなんですか?

任意後見人が、判断能力の衰えた本人のために事務処理を行うについて、その事務処理が適正になされているのかどうかを、判断能力が衰えている本人自身がチェックすることは困難です。

 

そこで任意後見制度では、本人に代わってチェックする立場の者を必ず設けることになっています。それが任意後見監督人です。任意後見契約により後見人を引き受けた者が、その後本人の判断能力に衰えが見られたことで契約に基づき、後見人の仕事を開始するに当たっては、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てをしなければなりません。この申立てがあれば、家庭裁判所は、本人の判断能力が不十分な状況にあると判断すれば任意後見監督人を選任することができます。

 

そして、任意後見監督人が選任されれば、その時から任意後見契約の効力が生じ、任意後見人は、任意後見監督人の監督の下に、契約で定められた範囲内の法律行為を本人に代わって行うことができることになるのです。

 

任意後見監督人は、任意後見人から財産の管理状況、身上監護について行った措置等の事務処理について報告させ、監督を行います。また、本人と任意後見人の利益が相反する法律行為を行うときには、任意後見監督人が本人を代理することになります。なお、任意後見監督人はその事務について家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所の監督を受けることになります。

徳島公証役場 公証人 芦屋大学 客員教授

京都府出身。関西大学法学部卒業後、1983年検事に任官。以後、大阪、京都、神戸、広島など関西、西日本の高検・地検を中心に勤務し、京都地検公判部長、広島高検刑事部長等を経て、2011年神戸地検尼崎支部長を最後に退官。同年公証人に任じられ、徳島地方法務局所属公証人として活動を始める。
現在、市民生活にもっと溶け込んだ有益な公証業務の普及を図るべく日常業務の他、講演活動、執筆活動に携わっている。

著者紹介

連載公証人が教える「成年後見制度」をめぐるトラブル事例と予防策

本連載は、2016年8月1日刊行の書籍『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

 

トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

栗坂 滿

エピック

「あなたの遺言書の書き方は正しいですか?」 間違った遺言書はトラブルのもと!! 正しい遺言書・公正証書の書き方40例を解説

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧