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任意後見契約に「延命措置の拒否」は盛り込めるのか?

今回は、「延命措置の拒否」を巡る任意後見契約のトラブル事例を見ていきます。 ※本連載は、日本公証人連合会理事・栗坂滿氏の著書、『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』(エピック)の中から一部を抜粋し、成年後見制度等にまつわるトラブルとその予防・解決法を紹介します。

任意後見契約を結び、延命措置拒否の希望も伝えたが…

≪トラブルの事案≫

A子さんは、ご主人に先立たれ、子どももいなかったことから、小さい頃から何かと面倒を見たりしていて仲が良く比較的近くに住んでいた姪のBに、自分が認知症にでもなってボケたときに後見人になってもらって身上看護や財産管理を頼もうと考えていたのでそれを打ち明け、Bも快く承諾してくれたので2人で公証役場に出掛け、任意後見契約を結びました。

 

A子さんは、いつも実の子どものように接してくれているBさんに全幅の信頼を置いており、自分亡き後に財産が残ればそれはBさんに継いでもらおうとも考え、その旨の公正証書遺言も公証人に作ってもらいました。

 

またA子さんは、自分が不治の病で意識もないまま延命のための機器に囲まれてベッドの上でただ死の時期を先延ばしすることだけはやめてほしいと思っており、延命措置を拒否して自然の死を迎えたい希望を任意後見人になってくれるBに打ち明けて頼んでいました。ただ、延命措置拒否の希望については何も書面を作成してはいませんでした。

 

こうしてA子さんは、任意後見契約書も遺言書も作成したので、心置きなく安心して老後を過ごせると思っていました。そして、その後A子さんに認知症の症状が出始め、Bの申立てにより家庭裁判所の審判で任意後見監督人が選任され、Bによる後見が開始されました。

 

任意後見契約だけでは実施できない「尊厳死」

ところが、その後A子さんは、家の近くで自転車とぶつかって転び、頭を強打してしまい、すぐに救急車で病院に運ばれ緊急手術を受けましたが、高次脳機能障害で意識がもどらなくなりました。また死期も迫っていて回復も望めないと診断され、延命措置で死期を引き延ばしている状況となりました。

 

BはA子さんのことを心配し、ずっと付き添っていましたが、A子さんの状態の説明を受け、A子さんが意識清明時に延命措置拒否の希望を打ち明けてくれたこと思い出し、病院の医師Cに延命措置を打ち切ることができるのか相談してみましたが、医師Cから、「A子さんは日本尊厳死協会に加入して延命治療拒否の書類リビング・ウィルを作ってますか。それとも、公正証書で尊厳死宣言書などを作っていますか。作っているなら見せてください」と言われました。

 

Bさんは、A子さんからそのような書類を作ったとは聞いておらず、そこで任意後見契約公正証書を出してBが任意後見人になっていることを告げましたが、それだけではダメだと言われ戸惑っています。

徳島公証役場 公証人 芦屋大学 客員教授

京都府出身。関西大学法学部卒業後、1983年検事に任官。以後、大阪、京都、神戸、広島など関西、西日本の高検・地検を中心に勤務し、京都地検公判部長、広島高検刑事部長等を経て、2011年神戸地検尼崎支部長を最後に退官。同年公証人に任じられ、徳島地方法務局所属公証人として活動を始める。
現在、市民生活にもっと溶け込んだ有益な公証業務の普及を図るべく日常業務の他、講演活動、執筆活動に携わっている。

著者紹介

連載公証人が教える「成年後見制度」をめぐるトラブル事例と予防策

本連載は、2016年8月1日刊行の書籍『トラブルのワクチン―法的トラブル予防のための賢い選択―』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

 

トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

トラブルのワクチン ―法的トラブル予防のための賢い選択―

栗坂 滿

エピック

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