世界的に強まるインフレ圧力…東南アジアを襲う
ブルームバーグのアナリストによると、ウクライナでの戦争と中国でのロックダウンによって引き起こされた混乱は、東南アジアの景気回復を遅らせているといいます。たとえばシンガポールとタイは、中国の長期にわたるロックダウンの影響をより大きくうけるとみています。タイは中国からの観光客に大きく依存し、シンガポールは中国との貿易に大きく依存しているためです。
一方で、インドネシアとフィリピンは経済が内需主導型であるため、力強い回復を示す可能性が高いといいます。
また、ロシアのウクライナ侵攻によるロシアに対する制裁措置により、商品価格特に石油、天然ガスと穀物価格が上昇している現状は、低所得世帯の割合が高い国にとっては、大きな負担になっています。
このインフレ対策として、ブルームバーグ・エコノミクスは、FRBが2022年末までに政策金利を3.5%まで利上げを続けると予想。東南アジアでは、各国の中央銀行がFRBと歩調を合わせて利上げを行わないと、資本の流れが問題になる可能性があるとも述べています。
フィリピンは今般、インフレ率が目標をはるかに上回ったため利上げを開始しました。ブルームバーグでは、フィリピン中央銀行が2022年から2024年の間に200ベーシスポイント利上げすると予想しています。
フィリピン債務負担増大に公共事業中止も視野に
国家経済開発庁(NEDA)は、国の増大する債務負担を効果的に管理するために、どのインフラプロジェクトを継続、一時停止、キャンセル、または官民パートナーシップ(PPP)に転換するか検討する必要があるとの見解を示しました。
インフラプロジェクトへの巨額投資は、社会プログラムやサービスへの資金提供とのバランスをとらなければならないとも述べています。
シンクタンクのインフラウォッチは、マルコス新政権は、監査委員会によってフラグが立てられ、否定的な報告の対象となっているインフラストラクチャープロジェクトをキャンセルする必要があると述べています。
たとえば、フィリピン首都の2番目の水源として位置付けられているケソン州のダムプロジェクトを引用しています。州の監査委員会は、環境保護論者が停止を求めているこのダムプロジェクトへの競争入札において、中国企業に有利に働いたように見えるとの指摘をしています。プロジェクトの労働力のほぼ半分が中国人労働者である中国資金による橋梁建築のような案件は、新政府では許可されるべきではないとも付け加えています。
カルロス・G・ドミンゲス財務大臣は、大手上場ディベロッパー「メガワールド社」に対して、事業停止命令を出すという内国歳入局(BIR)地域事務所の計画には根拠がないと述べました。メガワールドの株価は、BIRが事業停止命令を出す計画との報道によって、5月17日に急落。メガワールドが監査に協力すると述べた後、この事業停止命令は取り下げられました。
上場企業に関する事項を公に発表することで、企業だけでなく株主にも大きな影響を与えることになり、早まった動きは正しくないと財務大臣は述べ、社会保障機構(SSS)と公務員保険機構(GSIS)はメガワールド社の株主であり、マイナスの影響を受けました。
メガワールドの株主は5月17日から23日までの間に、株価の下落により合計で約1億1,100万ペソの価値を失い、SSSとGSISの損失は約3,700万ペソになりました。
BIR は、メガワールドがタギッグ市の不動産の売却に関する取引に税金を支払ったかどうかを確認する監査を遵守することを拒否したことに起因する事業停止命令を主張しましたが、財務大臣は、メガワールドは、BIRのアクセスを否定しておらず、地方事務所の管轄権に疑問を投げかけているだけだと述べています。
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